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電気エネ極力使わず“自動化”…豊田合成が取り組み広げる「からくり」とは?

電気エネ極力使わず“自動化”…豊田合成が取り組み広げる「からくり」とは?

森町工場のウェザストリップの工程で使用するからくり。滑車やてこの原理を使い、ハンガーを自動で返却・供給する

生産現場改善、海外でも

豊田合成は電気エネルギーを極力使用しない「からくり」を使い、現場の困り事を改善する取り組みを国内外の生産現場で推進している。国内では効率化や従業員の負担低減にも貢献する改善事例が増えており、年々レベルを上げている。グローバルではタイ拠点を皮切りに少ない投資での自動化が進むなど、グループ全体に横展開することで収益力向上につなげる。(名古屋・増田晴香)

森町工場(静岡県森町)では自動車のドア枠の部品「ウェザストリップ」を高所のハンガーに掛けて成形工程から仕上げ工程まで運び、仕上げ作業の際に作業台などに3回掛け替えていた。1・3キログラムある対象物(ワーク)の掛け替えに時間のロスや身体的負担が発生しており、空になったハンガーの返却も高所のためやりにくかった。

改善後は前工程の荷姿のまま同じハンガーで仕上げをすることで掛け替え作業を削減。滑車やてこの原理を取り入れ、空ハンガーはひもを引くだけで返却でき、それに連動して次のハンガーが供給される。掛け替え作業は3回から1回になった。安田洋副社長は「従業員の安全や負担軽減のためにも工程の見直しが重要」とからくり導入の意義を話す。

同工場ではホースを積んだ台車を後工程に送る作業も改善した。従来は人が後ろから手押しで前詰めしていたが、改善後は連結された台車を後工程の作業者が引っ張るだけで前詰めでき、段差がある部分で連結部が切り離されるからくりを採用。この結果、月に6・7時間かかっていた前詰め作業が廃止された。

からくりを使った改善は海外拠点でも活発だ。中国のグループ会社、豊田合成(佛山)汽車部品では既存の生産工程で使うコンベヤーの動力を回転ローラーに活用したからくりを製作。樹脂製品の組み付けに使うクリップを、向きをそろえて供給するシューターを開発した。

豊田合成グループでは豊田合成タイランド(TGT)が主導し、からくりと協働ロボットなどを組み合わせて低額の投資で自動化を実現する「賢い自動化」で生産性向上や省人化に取り組んでいる。日本や北米のほか、成長市場であるインドの新工場でも賢い自動化に着手し、効率的なモノづくりを追求する計画だ。

またエアバッグを生産するメキシコの製造拠点では、3年で20%程度の生産性向上を目指しており、うち10%をトヨタ生産方式(TPS)やからくりによる改善効果で達成する考えだ。

安田副社長は「からくりの横展開のスピードを高めるために、部品の共通化やデジタルでの図面共有などを進めている」とグローバルでの取り組み拡大に意欲を示す。


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日刊工業新聞 2024年11月22日

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