「SAF」国産供給の試金石…日本初、量産整備の運転が始まる
コスモ石油や日揮ホールディングス(HD)などは、2025年初めにも堺市内で日本初の持続可能な航空燃料(SAF)の量産設備の運転を始める。全国各地から集める廃食油3万トンを原料に、年間約3万キロリットルのSAFを製造する。大量輸入した原油から作る石油製品と違い、SAFは家庭などから少量ずつ原料を回収する仕組みが成否のカギだ。国産SAFの行く末を決める挑戦が始まった。(梶原洵子)
22日、コスモ石油の堺製油所(堺市西区)の一角ではSAF製造設備の建設が終盤を迎えていた。12月中に設備を完成させ、2、3カ月の試運転を経て、25年度初頭に航空会社へ国産SAFの供給を始める計画だ。
廃食油由来のSAFは石油由来のジェット燃料に比べ二酸化炭素(CO2)排出量を80%以上削減でき、空の脱炭素化に大きく貢献できる。コスモ石油の高田岳志次世代プロジェクト推進部長は「販売先は鋭意開拓している」と手応えを語る。
SAF事業を担うのは、コスモ石油、日揮HD、レボインターナショナルの3社が共同出資で立ち上げたサファイアスカイエナジー(横浜市西区)だ。親会社と連携し、原料調達から販売まで供給網全体をカバーする。
サファイアの最高執行責任者(COO)で日揮HDのSAFプログラムマネージャーの西村勇毅氏は「これは国産SAFの試金石になる」と意気込む。国内外で年産数十万キロリットルの大規模工場が計画されるが、原料確保がカギとなるSAFにとって、まず小規模でも量産規模で供給網全体を回せることを示すのが極めて重要なためだ。
レボはバイオディーゼル燃料生産を通じて原料回収に関する豊富な経験を持ち、これをSAF事業に生かしていく。
全国各地で回収された廃食油はトラックなどで堺製油所に集められ、水分や天かすなどの不純物を取り除く前処理を施し、高温高圧下で水素と化学反応させる。原料の約80%がSAFに、残りはプラスチック原料などになる。最後に国内規格に合わせるため、原油由来の燃料を混合して完成する。
SAFはゴミや木、草からも製造できるが、廃食油のSAFが最もCO2削減効果が高く、生産効率も高い。日本では事業所から排出される廃食油のうち年12万トンを海外に輸出し、家庭からの廃食油10万トンの9割以上を捨てている。回収には労力を要するが、国内で使わなければもったいない。新設備稼働を機に、多くの生活者を巻き込み、取り組みを盛り上げることが期待される。