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「向こう10年のマツダを支える」…SUV「CX-80」で開発者が目指したもの

【商品開発本部本部長 和田宜之氏】

3列スポーツ多目的車(SUV)として独自のポジションを築いた「CX―8」の後継車だ。当社で最も“包容力”がある商品となる。「クルマを愛している人からの期待に応える」ことと「大切な人と過ごす時間を、より豊かにする」。この両立を目指した。ドライバーだけでなく、同乗者にも、余裕あるキャパシティーを生かした移動空間を楽しみつつ、遠くまで出かけてもらいたい。

開発のコンセプトは「心の豊かさをもたらす グレイスフル・ドライビングSUV」とした。上質で優雅な体験を通じて、生活を豊かにする“ライフタイムバリュー”を提供するクルマ。デザインは堂々とした優雅な存在感、風格を持たせた。クルマとして美しいだけでなく生活を彩ってくれるだろう。

ベンチマークとしたのは競合他社のクルマではなく「CX―8」だ。同車ユーザーにアップシフト(乗り換え)を促すため、これを超える商品を作りたかった。

遠くに行くためには長い時間乗っても、疲れにくいクルマでなければならない。後列の乗り心地にも気を配った。特に3列目は余裕ある天井高を確保し、身長170センチメートルの人でも、しっかりと着座できる。全席で人間が、その能力を発揮しやすい姿勢がとれるようなシートを実現した。

高価格帯のSUVは成長市場だが競争は厳しく、顧客の期待も高い。(ラージ車種の兄弟車)2列SUV「CX―60」で評価が分かれていた上下方向の振動は「CX―80」で改善している。人間は横の揺れの方が不快に感じる。それを徹底的に消したことで、縦の揺れが強調されることになった。設計上の狙いだったが、あらためて顧客視点を重視した。

国内ではディーゼルハイブリッドとして唯一の存在。大排気量エンジンが不得意とする低負荷領域を小型モーターでカバーし、プレミアムSUVに匹敵する走りの力強さを、コンパクトSUV「CX―3」と同等の燃費性能で可能にしている。動力源が二つあることを気付かせずに、気持ち良く走ることができるはずだ。電動化技術を多く取り入れたことで制御にかかるソフトウエアは複雑化した。この経験がハイブリッド車(HV)やコネクテッドなど、これから先のマツダのクルマづくりにつながるだろう。

新車市場が縮小する将来も、マツダを選び続けてほしい。これまで以上に、顧客とのつながりを重視し“売り切り”からの脱却を目指す。「CX―80」から、保有することで得られる特別な体験を提供していきたい。

【記者の目/電動車投資の原資稼ぐ】

電動化移行期の屋台骨になるのがラージ商品群・CX―80だ。上級カテゴリーを狙い、パワートレーン(駆動装置)を含む新しいクルマづくりに挑戦した意欲作。毛籠勝弘社長が「向こう10年のマツダを支える」と期待するように、この内燃機関(ICE)車で世界各国の環境規制に適応し、電動車関連投資の原資を稼ぐ。(広島・小林広幸)


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日刊工業新聞 2024年11月25日

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