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デジタルリーダー、各部署に配置…JR東海が「非鉄道」で稼ぐ

デジタルリーダー、各部署に配置…JR東海が「非鉄道」で稼ぐ

オンラインで予約し、駅で受け取れる「スマートぴよ約BOX」

ニーズ先取りサービス化

JR東海がデジタル教育に力を入れている。全社的にデジタルリテラシーの向上を目指すほか、各部署にデジタル変革(DX)を推進するリーダーを置く取り組みもスタート。背景には、鉄道運行の現場などでのデジタル活用による業務効率化に加え、少子高齢化や人口減少などを見据えた非鉄道事業強化の方針がある。(高屋優理)

「コロナ禍で気づいたことが多い」―。JR東海の斎藤隆秀常務執行役員は、コロナ禍を経た鉄道事業者を取り巻く経営環境の変化を強調する。JR東海が11月にスタートした「デジタルリーダーアカデミー」は、こうした変化に組織としていかに対応するかという危機感が背景にある。

デジタルリーダーアカデミーは各系統から年齢や階層に関係なく40人を選抜し、講義やグループワークを通じてICT活用能力を習得する。デジタル変革(DX)で業務改革を推進する「ビジネスアーキテクト」を各職場に配置して課題解決を推進。業務効率化を進めるほか、ビッグデータを活用したマーケティングを駆使し、サービスの付加価値向上を目指す。

運輸各社はコロナ禍で旅客収入が激減し、営業赤字に転落。旅客収入に依存する事業構造の見直しを進めている。JR東海もコロナ禍を契機に経営改革を余儀なくされ、DXを活用した業務改革による収益拡大を戦略の一つに位置付けた。

DXの旗振り役を育成するデジタルリーダーアカデミー

2023年からは全社員向けのICT教育をスタートし、デジタルリテラシーの向上に着手。さらにデジタルリーダーアカデミーを通じ、各部署にDXの旗振り役を置くことで、DXの推進力を高める。デジタルリーダーアカデミーに参加した伊佐治義大リニア開発本部係長は「コロナ禍を経てこうした活動が増えてきた」と会社の変化を感じている。

JR東海が本社を置く名古屋駅には、ひよこを模したキャラクター「ぴよりん」のグッズがあふれる。ぴよりんはグループのジェイアール東海フードサービス(名古屋市中村区)が11年に開発し、21年に将棋の藤井聡太七冠が対局中に「ぴよりんアイス」を食べたことで人気に火が付いた。この人気にあやかり、コラボレーショングッズなど次々に商品を展開し、今や名古屋駅はぴよりん一色だ。

人気が高じ、課題も出てきた。一番人気「ぴよりんプリン」が連日大行列で手に入りにくくなってしまったことだ。ジェイアール東海フードサービスはこの課題を解決すべく、オンラインで予約して駅のコンコースにある「スマートぴよ約BOX」で受け取れるサービスをスタート。ボックスは常にぴよりんプリンでいっぱいとなるなど好評だ。

斎藤常務執行役員は「世の中の動きが早く、ニーズを先取りして多様なサービスを展開しなければならない」と話す。ぴよりんはグループのジェーアール東海フードサービスの事業だが、人気に火が付いたことで商品を拡大し、売り上げが伸びたことで出てきた課題をデジタルを活用して解決した一つのモデルケースだ。こうした取り組みを全社的に広げ、鉄道事業だけでなく、非鉄道事業でも収益拡大を目指す。

日刊工業新聞 2024年11月22日

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