「半導体関連」など注力…三菱ケミが化学に経営資源集中、カギ握る高機能材料の成長
三菱ケミカルグループは2030年3月期までの5カ年の新中期経営計画で、本業の化学事業に設備投資や研究開発費を集中させる。設備投資などの予算の約半分、研究開発費の半分以上を同事業に充てる方針だ。注力領域として半導体材料などを挙げており、主に高機能材料での事業成長がカギを握る。化学事業の成長を確立することで、持続可能な企業像を描く。(山岸渉)
「強い分野に絞り、勝てるシナリオを描いて投資をしていかないといけない。ブランド力をつけるために成長投資が必要になる」。三菱ケミカルグループの筑本学社長は、こう力を込める。
新中計では規律を持った事業運営や事業選別の基準を徹底し、成長軌道を確実にする考えだ。5カ年の設備投資・投融資や株主還元などの予算で、約3兆円を設定。このうち約1兆4000億円を化学事業の設備投資などに充てる。研究開発費は5年間で6800億円を計画する。「半分以上をケミカルに使う。資金や研究者をより市場に近い開発型に振る」(筑本社長)方針だ。
30年3月期にコア営業利益で25年3月期比約2倍の5700億円、売上高で同10・7%増の4兆9500億円を目指す。36年3月期には、コア営業利益を9000億円程度に引き上げる長期ビジョンも掲げる。化学事業のコア営業利益で、現在は業績をけん引している産業ガスと医薬品の合計を逆転する事業ポートフォリオの変革を描く。新中計は本業である化学事業の成長を確立させるため、弾みを付ける5カ年とも言える。
カギを握るのは、高機能材料を担うスペシャリティマテリアルズ領域だ。30年3月期には、同4倍超のコア営業利益を目指す。化学事業の成長投資は化学品のグリーン化や電気自動車(EV)向け素材、半導体関連など注力事業領域で実施する計画で、スペシャリティマテリアルズ領域が多くを占める。
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筑本社長は注力領域について「説明した分野はかなり伸びる。全部自信がある。マーケットでそれなりの地位を築くのに十分な技術力を持っている」と胸を張る。
その一例が、半導体材料・サービスの分野だ。半導体関連では合成石英などトップ級のシェアを持つ製品や、半導体製造装置などの精密洗浄サービスも日本などでトップシェアを誇る。こうした強みを、中長期的な事業成長を支える重要な分野と捉える。
他の領域でも、成長への手を打つ。アクリル樹脂原料「MMA」は、米国工場の許認可が下りた。引き続き検討中だが、環境対応を含む三つのプロセスを持つ生産技術力などの強みを生かす。一方、医薬品は傘下の田辺三菱製薬でパイプラインの拡充に向けた多額の研究開発費が必要になる。このため、資金協力をしてもらえる最適なパートナー探しに取り組む。
長期ビジョンや新中計の達成に向けて、それぞれの施策が重要となる。