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伊藤忠・豊田通商…大手商社、循環経済推進へ動脈・静脈接続する新産業創出

伊藤忠・豊田通商…大手商社、循環経済推進へ動脈・静脈接続する新産業創出

伊藤忠メタルズは改装・閉鎖店舗から回収した什器類などの分別・リサイクルに取り組む(イメージ)

大手商社がサーキュラー・エコノミー(循環経済)の構築に向けて廃棄品のリサイクル事業を強化している。伊藤忠商事は改装・閉鎖する全国の小売店舗などから什器類を効率的に回収するネットワークを形成。豊田通商は燃焼工程を経ずに車載用畜電池から重要鉱物を取り出す技術の実用化を目指す。資源の有効活用と温室効果ガス(GHG)の排出削減の双方を追求した静脈網を構築することで、環境負荷の低減を一段と推進する。(編集委員・田中明夫)

伊藤忠子会社の伊藤忠メタルズ(東京都港区)は金属原料をメーカーに供給する事業に加え、改装・閉店するスーパーマーケットや飲食店から陳列棚や冷蔵庫などを回収するサービスを展開。分別した金属などをメーカーに再び納めるリサイクルや最終処分までをワンストップで引き受けており、対応件数は年間3000―5000店舗に上る。

強みとするのが全国の廃棄物処理業者約150社や収集運搬業者約200社などと構築する、きめ細かい回収網だ。各地に店舗を持つ事業者に対する一律のサービス提供といった利便性に加え、「さらに多くの業者に参画してもらい、なるべく地産地消型にし、輸送費やCO2(二酸化炭素)排出量の低減に貢献していく」(阿部雄一執行役員)方針だ。

また東日本大震災の被災地支援をきっかけに始めた電子レンジなどのリユースは、全国8カ所に拠点を手配して年間17万個の商品を扱う事業に発展した。回収品の状態に応じてリユース・リサイクルを適切に選択する体制の構築を推進する。

豊田通商はトヨタ自動車などと共同で、車載用蓄電池に使われているリチウムなどレアメタル(希少金属)の新たなリサイクル技術の実用化に挑む。可燃性の電解液を蒸留して抽出した後にレアメタルを回収する手法を実証中で、従来の焼却炉で廃蓄電池を燃やす工程を経ないためGHG排出量を削減できる。

豊田通商はすでに海外でリチウム生産事業や車載用蓄電池の製造プロジェクトにも参画している。今井斗志光副社長は「(リサイクルも加えることで)脱炭素のカギとなる蓄電池のサプライチェーン(供給網)でクローズド・ループを構築する」と意気込む。

三井物産は製品の生産から廃棄・リサイクルに至る工程で排出されるGHGの算定プラットフォーム(基盤)「LCA Plus(LCAプラス)」を展開。原料やエネルギー量などを入力すると、GHG排出量が計算される仕組みで、提供開始後2年で大手メーカーなど100社超が採用した。今後は政府が検討中の業界や国境を横断するデータ連携基盤「ウラノス・エコシステム」とつながることで利便性が高まるとみており、リサイクルを含むGHG排出の可視化を通じ、環境負荷低減を一段と後押しする。

サーキュラー・エコノミーの形成においては、GHG排出量を低減しながら動脈と静脈を接続する産業を創出できなければ持続性が担保されない。供給網を広くカバーして新ビジネスを創出できる商社の力量が試される。

日刊工業新聞 2024年11月20日

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