中国陰りAI偏重…半導体製造装置メーカーの通期予想、〝再び〟上方修正に動いた背景
半導体製造装置各社は“再び”2025年3月期連結業績予想の上方修正に動いた。24年4―6月期決算の公表時でも上方修正が相次いだが、人工知能(AI)関連の投資が想定よりも強かった。26年3月期もAI関連投資は活況とされるが、これまで市場を引っ張ってきた中国需要には陰りも見える。半導体製造装置はますます「AI偏重」を強めることになる。
東京エレクトロンは25年3月期連結業績予想を上方修正し、売上高は8月公表時から1000億円増の2兆4000億円とした。同社は8月にも5月公表時よりも上方修正しており、今期2度目の上方修正だ。
アドバンテストも同様に、通期の売上高で7月公表時から400億円増の6400億円とする。
好決算のけん引役はAIだ。画像処理半導体(GPU)などのロジックや広帯域メモリー(HBM)といったAI半導体投資の需要増が続く。東京エレクトロンの河合利樹社長は「地域で言えば台湾が(上方修正の)ドライバーになった」と話す。そのほか、これまでに通期予想を公表していたKOKUSAI ELECTRIC、SCREENホールディングス(HD)、東京精密、芝浦メカトロニクスが上方修正した。
AIの勢いは26年3月期も続きそうだ。ある業界関係者は「AI半導体に関連する装置メーカーは生産台数を増やすために動いている」と話す。アドバンテストは高機能なシステムオンチップ(SoC)テスターが好調で、グループ最高経営責任者(CEO)のダグラス・ラフィーバ氏も「半導体の複雑性は増すばかりで、テストコンテンツは増え続けている。26年3月期も成長が期待できる」と強調した。
課題となるのはAI以外の半導体の回復遅れと中国需要だ。
AI以外の半導体投資は「依然として軟調で回復はまだら模様」(アドバンテストのラフィーバCEO)だ。別の業界関係者も「AI以外では投資の先送りも多い」と現状を話す。
近年市場を引っ張ってきた中国では、米国の規制も懸念材料だ。KOKUSAI ELECTRICの金井史幸社長は「投資は数年続くとみるが、規制などの影響を考慮し厳しめに見積もる」としている。東京エレクトロンも規制などを織り込み、中国向けの売上高比率は「下期(10月―25年3月)は30%台だと考えている」とする。
一見好業績の半導体製造装置だが、AI偏重は続きそうだ。そのため、AI需要次第では反転もあり得る。
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