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EV拡大で下請け細る…「金属プレス」経営環境激変で苦境、どう打開するか

EV拡大で下請け細る…「金属プレス」経営環境激変で苦境、どう打開するか

日本も有力プレス企業のEVシフトが進む(メタルアートのモーター試作部品)

省人化投資や市場開拓推進

欧米や日本など先進国の金属プレス企業が、電気自動車(EV)の市場拡大などによる経営環境の激変に苦しんでいる。主要顧客の自動車産業は新興国へ生産移管も進み、中小企業が多い金属プレスは自国の市場縮小が避けられない。インフレや人材難、資金不足など共通の悩みも抱える。自動車以外の市場開拓や働く魅力の向上、省人化への先行投資が欠かせない。主要な製造業を支える金属プレスの盛衰は、一国の成長力も左右する。(大阪・田井茂)

「英国はEV移行を進めながら販売が伸び悩んでいる。ブレグジット(英国の欧州連合〈EU〉離脱)によるEUとの貿易障壁もきつい」。10月に大阪市で開かれた「金属プレス国際会議」で、スティーブン・モーリー英国金属プレス連盟会長は苦境を明かした。金属プレスの200社を支援するが内燃車も依然製造され、各社はEV移行への適応力に差がつき始めている。

EV化が欧州より進む米国の金属プレスは、さらに深刻だ。従業員を50人雇うクリップス&クランプスインダストリーズのジェフ・アズナポリアン社長は、省人化とプレス技術へ意欲的に投資する。だが「電動化の政府規制が厳しく、事業転換は遅れ資金の調達も回収も難しい。インフレで賃金は高騰し、ドル高で輸出も痛手だ」と訴える。

日本も有力プレス企業のEVシフトが進む(メタルアートのモーター試作部品)

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欧米はEV移行の政策を急速に進め、下請けの金属プレスにしわ寄せが来ている。これに対し日本はEV移行に時間をかけるため、エンジン加工などの需要縮減に腰を据え取り組める余地がある。昭芝製作所(東京都練馬区)の三原寛人社長は「プレスと溶接にロボットを150台導入した。大量の倉庫から必要な工具を1分で探し出せる検索技術もIoT(モノのインターネット)で開発した。人工知能(AI)と組み合わせ製造業のソリューション(課題解決)事業を始めたい」と変化を好機ととらえる。国による価格転嫁の後押しや自動化資金補助も力強い支援という。

金属プレスは中小企業が中心で、人材難は各国とも厳しい。ドイツのブッシュホフ・スタンズテクニックのステファン・ブルーニングハウス社長は、若手への丁寧な技能教育から始め、在宅勤務も導入した。ただ「魅力ある職場にしたいが、金属加工の賃金は最低賃金よりはるかに高い。プレス加工のスピードを10%上げないとやっていけない」と嘆く。クリップス&クランプスインダストリーズのアズナポリアン社長は、「4年制大学の教育費に1人10万ドル以上かかる。大企業が若い才能をとっていく」と悔しがる。経済成長に製造業は重要と認識され、職業訓練の製造コースも復活したが共感は乏しい。

日本金属プレス工業協会が主催した金属プレス国際会議には、フランスと中国も参加した。EV先進国の中国は金属プレスの受注価格競争が激しく、経営者は「自動車から少し方向を変え、天然ガス関連に参入した」と説明する。経営者らは固有の難題を抱えながら他国と交流して知見も共有し、進むEV化や脱炭素など未踏の事業環境に立ち向かう。

日刊工業新聞 2024年11月15日

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