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MUFG×KDDI・みずほFG×楽天…メガバンク、フィンテック覇権争う

MUFG×KDDI・みずほFG×楽天…メガバンク、フィンテック覇権争う

みずほFGの木原社長(右)と楽天グループの三木谷会長兼社長

メガバンクがフィンテック(金融とITの融合)事業の強化に向け、情報通信技術(ICT)大手との連携を拡大する。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は14日、KDDIと共同出資するインターネット証券やネット銀行の資本関係を見直すと発表した。みずほFGは楽天グループ傘下の楽天カードに14・99%出資する。急速なデジタル化でスマートフォンを軸に多様なサービスが連携し合う中、経済圏拡大を狙った合従連衡が続きそうだ。

「日本で最も利便性の高いポイント経済圏を作っている楽天グループと、対面に強い当社が組むことでいろいろなことができる」―。木原正裕みずほFG社長は14日、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長と行った共同会見で両社の提携拡大の理由をこう説明した。

みずほFGは2022年に楽天証券に出資した。デジタル化需要を取り込み、その後の2年間で「(楽天証券の口座数が1100万超と)200万超増えた。預かり資産が約32兆円と2倍になった。この動きは無視できない」(木原社長)と両社の連携効果を強調する。

今回の楽天カードへの出資で木原社長が狙うのは、クレジットカード子会社を抱えるMUFGや三井住友FGと比べて課題だった、カード決済を起点にした新ビジネスの創出だ。個人向けには楽天ポイントがたまる提携カード「みずほ楽天カード」の提供を12月3日に開始。楽天グループが持つ加盟店向け決済機能や取引データを活用し、みずほの企業向け資金繰り支援ノウハウや各種決済サービスを組み合わせた新サービスを展開する。

楽天グループの約90万社の加盟店の事業者を対象に、法人向けカードの発行も検討する。楽天グループの三木谷会長兼社長は「楽天カードで法人カードを出してこなかったが、ニーズは高い。みずほグループと協力して拡大していきたい」と期待をかける。

一方、MUFGは2025年1月末をめどにKDDIと共同出資しているauカブコム証券の全株式を取得して完全子会社化する。同年2月にはauカブコム証券の社名を「三菱UFJeスマート証券」に変更予定だ。

楽天証券など手数料を抑えたネット証券会社が口座数を大きく伸ばす中、auカブコム証券の口座数は176万にとどまる。1300万口座を持つネット証券大手のSBI証券を傘下に持つSBIホールディングス(HD)は22年に三井住友FGの出資を受け入れるなど、競合の動きも激しい。MUFGはauカブコム証券の完全子会社化や社名変更でブランドを一体にするとともに、MUFGグループ各社と顧客基盤の連携などを進めて競争力の強化を図る。

MUFGはKDDIが持つ人工知能(AI)技術を生かした金融特化型の大規模言語モデル(LLM)も開発する。みずほFGは楽天グループのスマートフォン決済「楽天ペイ」での協業も期待されており、フィンテックでの連携強化が続くことになる。

日刊工業新聞 2024年11月15日

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