2020年には言語理解、30年には執事ロボ…AIの社会経済影響評価まとまる

国際的議論に向け国内に議論の場を形成へ

 人工知能(AI)が社会や経済に与える影響について、総務省情報通信政策研究所での検討結果がまとまった。AIの経済効果は2045年に121兆円に上ると推計。防災や製造業、医療など、16の産業分野ごとにAI化の見通しを示した。生活支援分野では20年ごろにAIが言語を理解し、30年に常識を備えた汎用的な執事ロボが普及するとした。
 「AIネットワーク化検討会議」としてAIや情報科学、哲学、法学、経済学などの有識者36人の議論を報告書にまとめた。経済効果については、AIが生産性を改善する直接的効果だけで日本の生産高を121兆円押し上げる。最低でも44兆円、最高だと188兆円。実質GDPは2045年時点で68兆円増加するという。

各分野20年にイノベーション続々


 防災分野では監視カメラやSNS分析によってテロ発生予測システムが実用化し、27年に災害救助ロボットが実用化する。オフィス分野のAI化は20年にビッグデータ分析やマーケティングが自動化し、25年頃にコールセンターでの自動応答が実現する。製造業では20年に無人メンテナンスやマスカスタマイゼーションが実現、30年には大企業では無人化工場が一般化し、設計リードタイムゼロや在庫ゼロが実現するという。

 現在、国家プロジェクトや産業界では野心的で挑戦的なAI開発テーマが走っている。これらの実用化目標は5-10年先が多いため、20年から30年にかけてたくさんのイノベーションが実現する予定だ。
 そのためロボットなどで生産性が向上し、レコメンデーション機能の高度化で消費が増大するなどして121兆円の直接的効果がある。さらに、労働効率の改善で生まれた時間で余暇産業が拡大、起業しやすくなるため地方経済が拡大するなどの波及的効果があるという。

負の側面も


 こうした社会変化は負の側面も伴う。理系研究者を中心に技術的なリスク、人文・社会系の研究者が法制度や社会的なリスクを洗い出した。
 ・窃盗や詐欺など、あらゆる犯罪がサイバー犯罪化する
 ・多数のAIが連動して意思決定し、そのプロセスが不透明になり制御も難しくなる
 ・AIがユーザーの信念や将来を推測することがプライバシー侵害になる
 ・AIが人間の意思決定を見えない形で操作して個人の自律が侵害される
 ・AIが国の統治に活用され、意思決定プロセスが不透明になり責任が曖昧になる
 など10種のリスクを浮き上がらせた。ただこの社会的な側面はSFなのか、実現性の高いリスクなのか研究者中でも意見は分かれる。リスクを提示した当該研究者にとっては差し迫りつつある問題でも、同じ分野の別の研究者は一笑に付すなど問題意識に大きな幅がある。

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日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
04月16日
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AIの恩恵を万人が受け、人間の尊厳と個人の自律が保障され、AIの制御可能性と透明性が確保され、AIが安全安心に使われる社会を実現する-。こんな感じの考え方が開発原則の前提として提案されました。「AIに支配されるかも」といった不安や嫌悪感を打ち消すための大原則なのですが、このAIを人間に置き換えたときに、どのくらい実現しているのかと思ってしまいます。取締役会や独裁制、代議員制など人間の組織統治の手法はいろいろあります。国や企業、チームなどによって一長一短がありますが、もしそれぞれの実現度を計れれば、AIによる統治システムに超えられた手法はAIに置き換わるべきとなるのかなと思いました。
(日刊工業新聞社編集局科学技術部・小寺貴之)

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