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「ペロブスカイト太陽電池」の中国製品、販売企業が考える中国の現在と日本の勝算

「ペロブスカイト太陽電池」の中国製品、販売企業が考える中国の現在と日本の勝算

建物の窓ガラス部分に設置して実証実験中のガラス型ペロブスカイト太陽電池。サイズは1200×600mmで透過度が20%と40%の2種類の製品を設置している

東京・赤坂にあるオフィスビル。そのガラス窓や敷地内にあるサイクルポートで次世代型太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の実証実験が行われている。実施主体は、輸入販売業のモリベニ(那覇市、中村英樹社長)。中国メーカーが手がけるガラス基板の製品を用いて、都心にある建物の垂直面に設置した場合の発電量などを検証している。モリベニは同製品についてすでに日本国内で試験販売を始めており、実証実験を通して性能を示すデータを整え、本格販売につなげる。将来は日本国内に自社の製造拠点を作り、メーカーとして供給する構想も持つ。

モリベニは中国スタートアップの極電光能(ウトモライト)と業務提携しており、現在は同社のガラス型ペロブスカイト太陽電池を取り扱っている。大きさは1200×600mmでエネルギー変換効率は15%程度。寿命は10年以上という。価格は1枚当たり3万9000円(消費税込み)。ウトモライトは中国・江蘇省無錫市で2400×1200mmサイズの製品の生産ラインを11月に稼働しており、今後はより大型で高性能な製品の販売を見込む。

ガラス型ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト太陽電池は、曇りの日や早朝などの低照度の環境でも発電できる特性がある。「実証実験では雨の日の発電も確認している。変換効率が20%程度まで上がれば、1日の発電量は(既存の)シリコン太陽電池を上回る」(中村社長)と力を込める。そうした特性を訴求して、建材一体型太陽電池(BIPV)などの用途で普及を図る。

中村英樹社長は中国出身で沖縄県の琉球大学に留学経験があり、日本国籍を取得している。2010年に沖縄県那覇市でLED照明を開発・販売する会社を立ち上げ、地元経済に貢献してきた。「沖縄は観光都市で産業があまりない。留学して好きになった沖縄に産業を作りたかった」(中村社長)と振り返る。また、沖縄は台風による被害に例年悩まされる。その課題を解決しようと、発電設備を備え、電力会社からの電力供給を必要としない、停電時の避難所などとして活用できるコンテナハウスを22年に開発した。その発電設備として着目した技術が、ペロブスカイト太陽電池だった。台風が到来した際の雨が降ったり曇ったりした環境でも、ペロブスカイト太陽電池なら発電が期待できると考えた。

それからウトモライトを含め、ペロブスカイト太陽電池を手がける中国メーカー3社と業務提携契約を結んだ。その中で、いち早く量産化にこぎ着けたウトモライトの製品について販路を整え、試験販売を国内で4月に始めた。また、提携関係のある中国メーカーのうち1社とは、研究資金を出し合って基板にフィルムを用いた製品の研究開発をしている。中村社長は「フィルム型は薄くて曲げられるため、搬送や既存の建物などへの設置がしやすい」と説明する。その上で「実証実験を通して劣化などの問題がなければ、将来は日本国内にフィルム型の製造拠点を自社で構築し、沖縄のメーカーとして世界に販売したい」と意気込む。

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「フィルム型は日本が世界のトップになる可能性が十分にある」

モリベニの中村社長はペロブスカイト太陽電池をめぐる中国の事情に詳しい。中国と日本の現状の比較などについて見解を聞いた。

モリベニの中村英樹社長

-中国におけるペロブスカイト太陽電池の研究開発の現状は。
 研究開発には数十社の企業が取り組んでおり、ガラス型の製品ではすでに量産体制の構築が進んでいます。例えば、ウトモライトは年産1GWの工場が24年内にも稼働します。また、各社が手がける製品の変換効率はどんどん向上しています。1200×600mmの実用サイズで変換効率18%程度の製品が、すでに安定的に生産できるようになっています。まだ生産は安定していませんが、20%を超える製品も出ています。また、市や省といった地元政府は製造拠点を作るための土地を無償で提供して企業を誘致するなど、積極的に支援していますし、ファンドによる投資も活発です。

―支援や投資が活発な背景を教えてください。
 太陽電池は中国国内ではもちろん、グローバルで有望な産業ですし、その中でペロブスカイト太陽電池はシリコン太陽電池に比べて製造しやすく、投資リスクが低いと考えられています。シリコン太陽電池を製造する場合、鉱山や高温環境でシリコンウエハーを製造する工場など複数の協力体制を構築する必要がありますが、ペロブスカイト太陽電池は設備を整えて原材料を調達すれば、1つの工場で製造できます。ペロブスカイト太陽電池の製造体制を整えるための投資額はシリコン太陽電池の5分の1と言われます。

―日本の状況をどのように見ていますか。
 日本企業は高いノウハウや技術を持っていると思いますが、その製造に対する支援や投資が慎重過ぎるように見えます。新しい技術の産業化には、やはり積極的な支援が必要です。また、中小企業の参入が増えればと期待しています。日本の中小企業は高いものづくりの技術を持っています。その中で、ペロブスカイト太陽電池の製造に生かせる印刷の技術やノウハウを持っている企業も少なくないと思います。そうして参入が増えれば、日本のペロブスカイト太陽電池産業は力強くなると思います。

私個人の意見ですが、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は日本が世界のトップになる可能性が十分にあると思っています。中国は量産化で先行していますが、それはガラス型の製品です。フィルムの加工は非常に難しいですが、日本はフィルムを扱う技術やノウハウがとても豊かですし、高度な印刷技術も持っています。例えば、中国がお金をかけて研究をしたとしても1-2年で蓄積できるものではありません。日本政府はフィルム型の支援に注力していると思いますが、その方針には賛成です。

ただ、ガラス型にも取り組むべきだと考えます。ガラス型の需要がすべてフィルム型に置き換わることはないでしょう。また、ペロブスカイト太陽電池の性能向上の方向として(光の吸収波長が異なる)2つのペロブスカイト層を作り、それらを積層して高効率化するタンデム型の開発があります。こうした挑戦もまずは加工が容易なガラス型で取り組むべきです。

―ペロブスカイト太陽電池の産業化に向けて、日本政府は対中国製品を競合として意識しています。こうした姿勢をどのように見ていますか。
 国としての政策や立場はあると理解しています。ただ、消費者は安くていい製品を使いたいと考えます。中国の製品であっても完全にシャットアウトはせず、本当によい製品であれば取り入れて、それを勉強して日本の研究開発に生かす方がよいのではと思います。

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