AIで創薬に成果あり…アステラスが臨床、研究者のアイデア最適化
人工知能(AI)による創薬の成果が出始めた。アステラス製薬は、自己免疫疾患の一つである原発性シェーグレン症候群の治療薬として開発中の「ASP5502」について、第1相試験を開始した。成功のカギは研究者の知見とAIの融合だ。ただAIで化合物を設計するだけでなく、研究開発の現場で「使えるAI」にしていくことが、AI創薬の成功につながる。(安川結野)
「AIの精度が高ければすぐに広まる、とうことはない。使い勝手などについて、研究者と対話を図ってきた」―。アステラス製薬の志鷹義嗣専務担当役員は強調する。例えば、研究者が知識や経験をベースに設計した化合物に対して過去のデータをもとにAIが特性を予測し、その結果を受けて研究者が再設計する使い方が同社では定着している。AIが提案した化合物を研究者が合成するのではなく、研究者のアイデアを最適化する対話型AIが特徴だ。
化合物ごとの実験結果のデータをまとめるといった研究者の負担となっていた作業を自動化することで、効率的に研究データを収集しながらAI活用を促進するといった仕組みも整えた。ASP5502はこうした環境下で創出された候補化合物で、これまで平均約2年かかっていた最適化を7か月で完了したという。
アステラス製薬の強みは、人とAIに加え、ロボット技術を活用した創薬だ。AIを用いて設計した化合物をロボットで自動的に合成し、さらにこうした化合物の効果を自動的に検証するロボットも導入した。ロボットは年中休みなく稼働でき実験データが集まるため、開発スピードが加速する。
医薬品は開発に時間がかかり、成功確率も高くない。また、製品のライフサイクルも早く、革新的な新薬を次々に実用化していく必要がある。AI創薬はこうした課題の解決に不可欠となりつつある。「医薬品開発のスピード短縮や毒性試験での脱落率などで、創薬AIを評価できてくるのではないか」と志鷹専務担当役員は説明する。創薬AIの性能は、企業の競争力を測る要因となりそうだ。