需要減とメーカー値下げ…鋼材相場に先安感、流通業者に強いられる厳しい商い
厚板、H形鋼、異形棒鋼の国内鋼材相場に先安感が出てきた。背景には、鋼材需要の弱さに加え、大手電炉メーカーの東京製鉄が10月契約分で値下げを実施したことがある。メーカーによる値下げ分の入荷を見越し、現在の在庫をさばこうとして安値で販売し、すでに相場が下がった品目がある。値下げ分の本格入荷が始まれば、さらに価格を下押しする圧力になりそうだ。流通業者は採算確保のため、少しでも価格を維持したいところだが、厳しい商いを強いられる。
厚板、H形鋼、異形棒鋼は主に建設案件で使われる。建設向けの引き合いは引き続いて弱い。国土交通省の建築着工統計調査によると、9月の全建築物の着工床面積は前年同月比3・2%減の890万平方メートルと11カ月連続減少。流通業者によると、「主力需要先であるはずの中小物件が本当に少ない」という。
東京製鉄は10月契約分の店売り向け鋼材価格の建値について、厚板でトン当たり1万5000円、H形鋼で同1万2000円、異形棒鋼で同1万円下げた。こうした動きを受け、東京地区の厚板相場は10月に同5000円下落。H形鋼相場は同3000円、異形棒鋼相場は同4000円、それぞれ下がった。値下げ分が入荷する前に現在の在庫全てをさばき、「損を最小化したい」(同)との思惑もうかがえる。
相場の下げ幅はメーカーの下げ幅に達しておらず、まだ値が下がる余地がある。引き合い増加の兆しが見えない中、流通業界では「なるべくこれ以上の下げは避けたい」といった声も聞かれている。
日刊工業新聞 2024年11月09日