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ニデック・TDK・京セラ…電子部品8社、4―9月期決算の全容

電子部品8社の2024年4―9月期連結決算が7日までに出そろい、6社が前年同期比で営業増益だった。電気自動車(EV)に対する需要低迷や上期(4―9月)に進んだ円高の影響がみられたが、スマートフォンの新機種発売やデータセンター(DC)市場の回復を受け、2社が25年3月期連結業績予想の売上高を上方修正した。さらに、一部メーカーは成長分野への積極投資を目的とした経営改革方針を示し、収益基盤を強化する。

車の電動化は電子部品メーカーにとって追い風となる。ただ、上期は欧州を中心にEV需要が減退したようだ。ニデックの岸田光哉社長は欧州OEM(相手先ブランド生産)メーカーにおけるEVを取り巻く環境を「大きな荒波が来ている」と表現。京セラの谷本秀夫社長は「欧州の自動車産業が非常に悪い」とし、需要減少のあおりを受けた。

一方、複数の電子部品メーカーがスマホの新機種投入という季節性要因を捉え、好調な業績を維持した。スマホに搭載する小型二次電池やセンサー、アクチュエーター(ピント調節部品)、積層セラミックコンデンサー(MLCC)などの販売が伸びたという。

スマホ向けの電池などが好調だったTDKの斎藤昇社長は「付加価値の高い電池の比率が徐々に増えていることがポジティブな影響をもたらした」と語る。また、村田製作所のMLCC工場稼働率は7―9月期実績で85―90%の高水準を記録。下期(10月―25年3月)も同程度の稼働率を維持する見通しだ。

さらに、生成人工知能(AI)の活用が進む中、DCでのAIサーバー用水冷モジュールへの引き合いが増えているほか、容量が大きい記憶装置に対する需要増を背景とした、ハードディスクドライブ(HDD)市場の回復も業績をけん引。ミネベアミツミの貝沼由久会長兼最高経営責任者(CEO)は「足元で力強い回復がみられている」と強調した。

生成AIの利用拡大や自動車の電動化をはじめとした電子部品メーカーへの追い風を業績につなげるため、収益基盤を強化する動きは活発だ。例えばアルプスアルパインは、パワーインダクター事業を売却すると発表したほか、アイルランド工場では車載事業から撤退するとし「規模縮小は全体としてかなり大きなものになる」(泉英男社長)と言及。ほかにも、京セラは保有するKDDI株を一部売却し、総額5000億円程度を調達する。各社が成長分野への投資を一段と加速していく。

日刊工業新聞 2024年11月08日

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