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熊本地震についてドローンや災害対応ロボットの専門家に聞く

熊本地震についてドローンや災害対応ロボットの専門家に聞く

ドローンを飛ばすNTT東日本(NTT東日本提供)

 熊本地震で改めて災害への備えの重要性が示された。それに応えようと研究開発が進むのが災害対応ロボットの分野だ。実用化されてから25年の歴史がある無人建機と、普及目前の飛行ロボット(ドローン)など、ロボットごとに運用状況はさまざまだ。熊本地震の特徴は夜間に住宅地と山間部で発生したこと。災害対応ロボットの専門家に聞いた。

田所諭=東北大学教授


「災害対応ロボットに求められるのは、倒壊物下の人命探索だ」
 東北大の災害科学国際研究所と情報共有して熊本地震への対応を検討している。15日朝の時点では大学のロボットの出動が求められることはなさそうだ。倒壊した建物は木造家屋が中心で、消防隊や自衛隊がもつ機材で対応できる。

 災害対応ロボットに求められるのは、ビルなどコンクリート建築物の倒壊物下の人命探索だ。範囲が広く、中から人を探すことが難しい。ヘビ型ロボや能動スコープカメラが使える。高性能マイクで内部の音を聞いてどこに居るか特定する。

 今回の震災発生は夜だったため通常のカメラでは状況はわからない。だが、レーザー測量など技術で家屋倒壊を判定できる。近赤外カメラなら夜間も撮影できるが消防や警察のヘリコプターに配備されているかは課題だ。夜間対応は特殊な装備になってしまう。

 山間部は広域調査と、土砂崩れでできた土砂ダムの対応にロボットが求められる。広域調査はドローンだと効率が良い。土砂ダムの工事は雨や余震による二次災害を避けるために無人建機が求められる。

 初期の状況把握に使われるドローンは市町村単位に一つずつなど、ある程度の密度で配備されることが望ましい。機体の値段は下がってきており、自治体がとりそろえることは可能だ。

 災害は、災害ごとに状況が変わる。まったく同じ災害は二度と起こらない。熊本地震で、どんな要望や課題があったか調査分析し、ロボット開発につなげていきたい。
<ImPACTタフロボティクスチャレンジ・プログラムマネージャー>

野波健蔵=千葉大学特別教授


「ドローンは夜間撮影用に暗視カメラを搭載すべき」
 災害現場の広域調査にドローンは有効だ。熊本地震は朝になり被害全容がはっきりした。ロボットなら夜間にできることがたくさんある。有視界飛行ができない夜間でも、自律型のドローンなら飛んで情報を集めることが可能だ。災害用に配備するドローンは夜間撮影用に暗視カメラを搭載すべきだ。

 今回、被災した自治体はドローンの保有企業と災害協力協定を結んでいたのだろうか。災害時であっても住宅上空を飛ばすには警察や消防からの依頼が必要だ。災害協定さえ結べば、個々に許可を取らなくても企業はドローンを飛ばして情報収集できる。協定がなければ、技術者やドローンがそろっていても飛ばすことはできない。手続きだけの問題だ。

 昨夜からもどかしく思っていたが、朝になって災害の全容に驚くというのはいただけない。ドローンの産学連携組織「ミニサーベイヤーコンソーシアム」を一般社団法人化し、自治体と災害協力協定を結ぼうと思う。災害調査はボランティアでいい。日本の危機管理を考えれば必要なことだ。
<ミニサーベイヤーコンソーシアム会長>

鈴木真二=東京大学教授


「有人ヘリの活動を妨げないように」
 熊本地震は余震が多い。山間部で土砂崩れなどの二次災害を避けて広域調査するには、自律飛行のドローンが有効だ。屋外はGPSを元に飛べるため自律飛行の技術自体は確立している。課題は飛行距離とデータ測定精度、安全性だ。マルチコプター型(複数回転翼タイプ)だけでなく、長距離を飛べる固定翼型や大型ヘリの無人化も必要だろう。

 薬や緊急物資の運搬もドローンに期待される役割だ。有人ヘリコプターが第一候補だが、緊急の場合はドローンが活躍する。例えばNTT東日本は復旧作業にドローンを利用している。災害時に通信ケーブルの敷設に利用し、普段は高架線の鉄塔や橋などの点検に使っている。

 災害時に自治体などの公的機関はドローンを利用できるが、事前の訓練が必要だ。有人ヘリの活動を妨げないなど二次災害を防ぐ必要がある。ドローンと有人ヘリの飛行高度は重ならないが、離着陸の際にニアミスするリスクがある。ドローンがヘリの接近を検知する技術、どちらに避けるといった飛行ルール、ドローン操縦者に指示を与える機器など、技術とルール、実証を三位一体で進める必要がある。
<日本UAS産業振興協議会(JUIDA)代表理事>
ニュースイッチオリジナル
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
災害対応ロボットは2011年の3.11以降、災害が起きてるのになぜロボットは活躍しないのかと強く問われる分野になりました。「そこにいないから」が表面的な理由で、「いない」理由は、「あるけど間に合わない」、「安くない」、「使えない」などロボットによってさまざまです。災害対応専用にロボットを配備できれば良いのですが、地方自治体の財政事情は厳しいものがあります。現在、「あるけど間に合わない」の筆頭がドローンです。NTTはインフラ保守と災害復旧の共使いを実現しました。インフラ保守で数が配備されれば災害時に駆け付けることがことができます。災害復旧から災害の初動調査へ、より早く、効果の大きいステージに貢献できるように運用モデルを開発してほしいです。これは大学での技術開発だけでは手の届かない領域です。(日刊工業新聞社編集局科学技術部・小寺貴之)

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