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新社屋、仮オフィスで予行演習…野村不動産が取り組む2つの理由

新社屋、仮オフィスで予行演習…野村不動産が取り組む2つの理由

カフェスペースの設置により社員同士の交流促進を図る

仮オフィスで課題洗い出し

野村不動産グループが従業員同士の連携促進や生産性向上を目的とする新たなオフィスづくりの実験に取り組んでいる。舞台となるのは、部署単位で一時的に働くために設けた仮の仕事場「トライアルオフィス」。新オフィスに似た環境を全社員が移転前に体感する予行演習の場に位置付ける。働き方改革の新潮流の効果や課題を洗い出し、自社のオフィス事業に生かす狙いもある。(編集委員・古谷一樹)

野村不動産が東京都港区の芝浦エリアで取り組む再開発事業「BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)」。高さ約230メートルのツインタワーの一つで、2025年に竣工するS棟に同社のグループ各社の本社を集約、移転する計画だ。

移転に先立ち、建て替え予定のビルにトライアルオフィスを設置。グループの社員が部署単位で2カ月ごとに入れ替わりながら仮となる同オフィスに出勤し、新本社での働き方を22年11月から前もって体感している。

目的は大きく二つ。一つは立地やオフィスのレイアウトが大きく変わることへの順応を後押しすること。もう一つは、オフィスが分散していたグループ社員の連携を促すことによる相乗効果の創出だ。

ファミレスブースも用意

「一気に環境を変えると社員が混乱する懸念がある」。野村不動産ホールディングスの春日倫グループオフィス戦略室長がこう指摘するように、経過措置を設けることで、本社移転に伴う業務効率の低下を回避する狙いがある。

東京・西新宿にある現在のオフィスは20程度のフロアに分かれており、島型のレイアウトの部署が多い。一方、新オフィスはフロアを集約した上で部署やチームごとに大まかなエリアを決め、自分の席を選ぶ「グループアドレス」を採用。座席選択の自由度を確保しつつ、部署内の関係者同士がコミュニケーションを取りやすい空間とした。

また部署の垣根を越えたコミュニケーションの活発化や交流促進に向けて、偶発的な顔合わせの機会をつくるさまざまな仕掛けを施している。一例がコーヒーマシンなどを備え付けたカフェスペース。リラックスした状況で顔を合わせられ、「交流が深まる効果を確認できた」(春日室長)。

デスクや椅子、それらの配置に関しても、パーティションで仕切られたブースやファミレスのような6人掛けの椅子など、大きさや色合いは実にさまざま。その時々の業務内容や気分に応じて自由に家具や位置を選択し、使い分けることで生産性を向上する効果を一段と引き出そうとしている。

トライアルオフィスには一般社員だけでなく役員も勤務し、24年3月に1巡目を終えた。2巡目の現在は、1巡目の勤務で把握できた課題の検証も行っている。大規模で長期間にわたる取り組みはオフィスづくりに関する知見の蓄積も期待され、「オフィス事業者としての強みにつながる」(同)としている。

日刊工業新聞 2024年11月04日

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