「mRNAワクチン」など製造拠点を整備…米モデルナ、日本で事業本格化の狙い
湘南にバイオ医薬品拠点
米モデルナは日本での事業を本格化する。同社は17日、経済産業省などの支援のもと、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンをはじめとしたバイオ医薬品の製造拠点を湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク、神奈川県藤沢市)に数年内に整備すると発表した。また疾患領域を広げる計画で、国内で医薬品の開発から製造までを一貫してできる体制が整う。革新的な技術を持つモデルナの拠点整備は、国内の創薬力強化にも貢献する。(安川結野)
「日本の創薬エコシステムに期待している」―。モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は同日の会見で、日本の製薬産業への期待を強調した。モデルナはこれまでも国内の大学や製薬企業、政府とも協業しながらワクチンの開発と供給を進めてきた。製造拠点の整備は国内でのワクチンの安定供給に加え、関係各所とのコミュニケーションの迅速化を図る狙いもある。国内での臨床試験の実施や承認申請に必要な情報提出を効率化できる。
また、バンセルCEOは「小児の希少疾患やがんの個別化医療を可能とするmRNA医薬品も実用化したい」と今後の開発計画を明かす。新拠点は平時にはバイオ医薬品を製造し、感染症のパンデミック発生時にはワクチン製造に切り替える「デュアルユース」の製造設備として運用する。国内ではまずは新型コロナワクチンの供給に注力する見通しだが、がんや希少疾患といった新薬の開発や製造においても重要な拠点として機能しそうだ。
日本では、海外で承認されている新薬が日本で承認されるまで時間がかかる「ドラッグラグ」や海外の新薬が日本で使えない「ドラッグロス」が大きな問題となっている。米国のバイオベンチャーであるモデルナが製造拠点を構えることは、同社にとって日本での新薬開発の優先度が向上することを意味し、国内の創薬力強化に向けた大きな成果といえる。海外の有望なバイオベンチャーの誘致と国内機関との連携促進が、日本の製薬産業の成長の起爆剤となりそうだ。