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寸法変化を自動調整…東海理化が開発、「スマート金型」の効果

寸法変化を自動調整…東海理化が開発、「スマート金型」の効果

プレス加工では金型や設備が熱の影響で膨張し、その影響で成形品の厚さ寸法が変わってしまう課題がある

岐阜大と開発、生産性と品質両立

東海理化は金型自身に自律的な調整機能を持たせ、プレス加工に伴う寸法変化を自動で修正する機構などを備えた「スマート金型」を開発し外販を始めた。金型や機械設備の熱膨張による成形品寸法の変動や、金型の破損による不良の発生を防ぐ。製造現場のデジタル変革(DX)活動の一環。すでに自社の量産ラインに導入しており、今後はプレス加工を手がける企業に外販して金型人材の不足や生産性に悩む企業の課題解決に貢献する。

一般的にプレス加工では金型や設備が温度上昇に応じて膨張し、その影響で成形品の厚さ寸法が変わってしまう課題がある。解決策として東海理化は、金型の部品である「パンチ」の出方を加工中に自動調整する機構を開発した。

自動調整機構はプレスした直後の成形品の厚さをセンサーで測定し、その結果を金型にフィードバックする。寸法公差から外れそうな場合はパンチを調整し、成形品の厚さを増減できる。

金型の自動調整機構のイメージ。パンチの出方を加工中に自動調整する

通常は作業者が定期的に成形品を抜き取って寸法を測定し、必要に応じて設備を停止して金型を調整し直す手間が生じる。生産開始から金型温度が安定するまで「捨て打ち」をする場合もあり、材料のムダなど経済的ロスが発生する。

開発した自動調整機構は設備を止めずに済み、捨て打ちによるロスも出ない。成形品を全数測定しているため、より安定した寸法での生産も可能になる。

金型の微小な破損を検知するシステムも開発した。金型にセンサーを設置し、金型にかかる荷重を測定する。歪みの波形を正常時のものと比べることで破損を判定し、生産を停止する信号を送る。従来は小さな破損になるほど発見しにくく、不良品を作り続けてしまうことが課題だった。

東海理化は小物・精密部品のプレス加工を手がける。現場の課題に対処するためDX技術を使った金型の開発を着想。岐阜大学地域連携スマート金型技術研究センターとの共同研究で実現した。

東海理化の社内ではシートベルト巻き取り装置部品の量産ラインでスマート金型を活用している。今後は外販にも力を入れ、DXによるプレス加工の大幅な生産性向上や品質向上に貢献する。

日刊工業新聞 2024年10月11日

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