がん治療に応用期待…細胞死のバイオマーカーの新種、東北大が発見した意義
東北大学の西澤弘成非常勤講師と五十嵐和彦教授らは、がん治療の効果や感受性判定への応用が見込まれる細胞死の新たなバイオマーカーを発見した。生体内でがん細胞の除去機構として働く細胞死「フェロトーシス」時に細胞内のビリベルジンという化合物が減少することを示した。化学療法や免疫療法でがんが縮小する際にもフェロトーシスが起こることが知られ、ビリベルジン測定により治療効果を予測できるようになると期待される。
シアノバクテリア由来の光受容体たんぱく質「シアノバクテリオクロム」を用い、細胞にフェロトーシス誘導刺激を加えると、細胞死とともにビリベルジン量が大きく減少することを突き止めた。東京都立大学の成川礼准教授らが開発したシアノバクテリオクロムは、ビリベルジンと結合すると赤色蛍光を発し、細胞内のビリベルジンを検出できる。
ビリベルジンの減少は、アポトーシスなど他のタイプの細胞死では起こらず、フェロトーシス特有の現象と分かった。さらに、細胞内ビリベルジン動態を調べると、フェロトーシス誘導開始前からビリベルジン量が低下しており、誘導でさらに減少した。ビリベルジン量低下は潜在的なフェロトーシスへの待機状態と考えられ、細胞のフェロトーシスへの感受性の指標にできる可能性がある。
分子標的治療が効かなくなったがん細胞ではフェロトーシスへの感受性が上がるとされる。こうしたがん細胞の治療耐性化の検出への応用も見込まれる。
日刊工業新聞 2024年10月17日