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<防災最前線#05>JAL、コントロールセンターで不測の事態を集中管理

東日本大震災を受けて、各社はどう対応したのか
<防災最前線#05>JAL、コントロールセンターで不測の事態を集中管理

OCCには運航に関わる情報が集中する

 日本航空(JAL)は国内線・国際線を合わせて、1日約1000便を運航し、24時間・365日、世界中で飛行機が飛んでいる。予期せぬ災害が起きると、飛行機をどうするか、瞬時に判断しなければならない。こうした不測の事態に日々対応しているのが、JALの運航の機能を集めた「オペレーション・コントロール・センター(OCC)」だ。運航に関わる全ての情報がリアルタイムで集まるOCCでは、全社員に情報を伝達するシステムの運用を始めた。

 OCCは運航管理、や機材、整備、客室など、運航にかかわる各部門から人材が集まっている。約130人の社員が、モニターをにらみながら、運航スケジュールの統制を軸に、機材や整備の調整、乗員スケジュールの管理、運航情報の発信までを手がけている。

 OCCが対応するアクシデントは天候から急病人発生、機材トラブル、テロ、地震などの自然災害と大小さまざま。西尾秀樹オペレーションコントロールセンター長は「毎日必ず何かが起こる」と話す。取材で訪れたこの日も、飛行中の航空機に落雷があり、OCCは一時、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。

定期的な訓練


 OCCに集まる情報を統括し、運航の判断をするのが、ミッションディレクターだ。ミッションディレクターは時として社長に代わる権限を与えられており、さまざまな情報を分析して、運航の是非などの判断を下す。現在、OCCには9人のミッションディレクターが在籍し、交代で業務にあたる。

 この中には機長もいて、日々のフライトをこなしながら、シフトに入っているという。ミッションディレクターも担う西尾センター長は「ミッションディレクターはオーケストラの指揮者のようなもの。瞬発力が問われる」と話す。

 OCCの機能や体制が見直されるきっかけとなったのが、2011年3月の東日本大震災だ。OCCは通常、東京・天王洲の本社にあるが、有事の際、機能をどこに移して情報を集めるのか、その手順があいまいだった。震災後、どのように機能を移すか、手順を整備し、伊丹や関西、福岡など国内の主要空港で、定期的な訓練なども実施している。

全社員へ提供


 また現在、OCCの運用で課題となっているのが、OCCに集まる情報の共有だ。情報通信技術の発達やWi―Fiの普及で、飛行機を利用する乗客の情報収集力が高まっている。空港の地上職員や客室乗務員は、利用者に先んじてさまざまな情報を把握しておく必要があるため、15年10月より、OCCから全社員への情報提供を始めた。

 OCCが提供する情報は天候や災害など多岐にわたる。「OCCには運航に関わる情報の第一報が入るため、それを担当部署につなぐ」(西尾センター長)ことが役割。これまでは情報の配信先が運航部門など限られていたが、影響を受ける可能性がある空港や各部署に、直接配信する仕組みに変えた。こうした取り組みを通じ、社員のリスクマネジメントの感度を上げることを目指す。
(文=高屋優理)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
新幹線が脱線という情報もありますが、公共交通機関は随時情報の発信をしてもらいたい。

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