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絶好調アップルに秋波を送るサムスン。半導体での復縁は実現するか!?

次期アイフォーンのプロセッサー受託狙う。「アップル経済圏」は部品や装置にも
 米アップルが4月27日(現地時間)に発表した2015年1―3月期の決算は相変わらずの好調ぶり。特にアイフォーンの販売台数は前年同期比で4割増の6117万台、売り上げも55%増と業績をけん引している。

 そんな強者アップルに秋波を送るのが“かつてのライバル”韓国サムスン電子。スマートフォン事業では一時期、真っ正面から争っていた両社だが、サムスンが中国メーカーの台頭でスマホ事業が大失速。ここにきてサムスンはもう一つの柱である半導体事業に軸足を移し始めた。

 昨年10月にはソウル近郊に1兆5000億円を投じメモリーの新工場建設を発表。さらに先日、韓国の金融情報サイト『Money Today』が、約1兆円を投じピョンテク(平沢)にも新工場を作ると報じた。実はこれが、アップルに対し、アイフォーン向けプロセッサーを「大量発注して下さい」アピールではないかとみられている。

 もともとサムスンはアイフォーン向けプロセッサーの中核サプライヤーだったが、スマホ事業の競争が先鋭化していた2012―2013年ごろ、アップルは部品調達で“脱サムスン”に動いた。現在のアイフォーン6に搭載している「A8」プロセッサーは、約7割の生産を台湾のTSMCが受託したといわれている。

 次期モデルの「アイフォーン6S(仮称)」に採用するとみられる「A9」プロセッサーは、先端の14nm(ナノメートル)プロセスで、サムスンが再び主要サプライヤーになるという報道も出ている。サムスンはスマホ事業で「ファスト・フォロワー(機敏な追随者)」からイノベーターへの転換に失敗した。一時期、サムスン内でやや虐げられていた半導体は優等生に返り咲きつつある。

 昨日、経営統合の破談が明らかになった東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズ。サムスン、TSMC、米インテルなど大手半導体メーカーとの主導系争いが影響しているという見方も一部にある。確かに先端の14nmプロセスは、東京エレクトロンとアプライドの技術なしに実現しない。
 
 一方でアップルは、ジャパンディスプレイの液晶投資に関与するなど、近年は主要部品へのコミットが非常に強くなっている。製造装置再編の裏側にアップルの「天の声」があったとしても不思議ではない。
ニュースイッチオリジナル
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
アップルのクックCEOは調達の達人である。サムスンに限らず対アップルへ深謀遠慮を巡らすサプライヤーはとても多い。

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