ニュースイッチ

超硬合金にアルミ添加…大阪産技研、レーザー肉盛り溶接の欠陥抑制

大阪産業技術研究所は超硬合金のレーザー肉盛り溶接時に生じる欠陥を抑制する技術を開発した。超硬合金の肉盛り層内で一酸化炭素(CO)の気泡が発生し、それが割れや密着不良など欠陥の原因となることに着目。超硬合金にアルミニウムを混ぜることでCOによる気孔欠陥の発生を抑えることに成功した。金型や切削工具の一部について、硬度や耐摩耗性に優れた超硬合金に置き換えることができれば、高強度の道具を低コストで作れる可能性がある。

レーザー肉盛り溶接はレーザー光を照射しながら粉末材料を供給することで母材表面に肉盛り層を形成し、表面の改質や補修をする技術。また超硬合金は炭化タングステンとコバルトを混合して焼き固めて作り、優れた耐摩耗性能を持つ。

大阪産業技術研究所は欠陥抑制に向け、超硬粉末のレーザー肉盛りでガスが発生する仕組みを分析した。母材上にできる超硬粉末が溶けてできた溶融池を2枚の石英ガラスでせき止め、石英ガラス越しに1秒当たり2万フレームの高速度カメラで溶融池の内部を観察。溶融池内部から気泡が発生し成長する様子を確認できた。ガス分析の結果、気泡の正体がCOであることを突き止めた。

COの発生を抑えるため、アルミ粒子を超硬合金粒子の表面に付着させた粉末材料を使い、レーザー肉盛りを実施。肉盛り層の断面の画像を解析した。アルミを添加した超硬金属の粉末を使った場合の気泡による空洞の割合は、アルミを添加しない場合に比べ50分の1となる0・4%に減少した。

金型や切削工具の表層への付加加工技術として、超硬合金のレーザー肉盛り技術の確立が期待されている。だが肉盛り層には多量の気孔欠陥が生じやすく、超硬合金の特性を生かした肉盛り層の形成は難しかった。

日刊工業新聞 2024年10月09日

編集部のおすすめ