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輸送「アリアン5」の2倍へ…アリアンスペース、新型ロケット年内打ち上げ

輸送「アリアン5」の2倍へ…アリアンスペース、新型ロケット年内打ち上げ

アリアン6初号機の打ち上げ(ESAのYouTubeチャンネルより)

欧州宇宙企業のアリアンスペースは新型の大型ロケット「アリアン6」2号機と低軌道への衛星投入用ロケット「ヴェガC」3号機を仏ギアナ宇宙センターから2024年内にも打ち上げる。アリアン6にはフランスの光学衛星「CSO3」、ヴェガC3号機には欧州連合(EU)と欧州宇宙機関(ESA)の地球観測衛星「センチネル1C」を搭載する。打ち上げ機会を増やし、世界の宇宙開発の促進に貢献する。(飯田真美子)

アリアン6初号機は7月に打ち上げに成功したが、衛星分離後に推進装置が停止するトラブルが発生。原因究明は完了しており、2号機への改良措置が完了した段階で打ち上げ日時を確定する方針。24年内の打ち上げを目標としている。ヴェガCに関しては、22年に同2号機が打ち上げに失敗し、原因究明を進める上で燃焼試験などを行っていたが打ち上げは実施されていなかった。約2年ぶりの打ち上げ再開を目指す。

アリアン6は大型ロケット「アリアン5」の後継機。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発した新型の大型基幹ロケット「H3」と同様、衛星の重さや個数によって補助ロケットや衛星を載せる先端部分のフェアリングをカスタマイズできる。アリアン5ではできなかった衛星の2基同時打ち上げや、上段が軌道から脱離するシステムによってデブリにならない仕組みなどの新たな技術が盛り込まれている。

さらにロケットの上段に再着火が可能なエンジンを搭載していることで静止軌道への円滑な衛星投入が可能となり、低・中軌道を含むユーザーが望むさまざまな軌道に衛星を輸送できるようになった。4日に東京都内で開かれた記者会見で、アリアンスペースのステファン・イズラエル最高経営責任者(CEO)は「当社は欧州を中心に世界中の衛星などを宇宙に輸送しており、これまでに日本の衛星も運んでいる。今後も連携を強めたい」と意気込みを語った。

ロケットの打ち上げ回数に関して、イズラエルCEOは「アリアン6は27年にも年10回の打ち上げをできる体制を実現する。そのうち6基が商用衛星、4基が政府衛星を打ち上げるイメージを持っている」と説明。アリアン5の打ち上げ回数は年5―6回だったため、前機の約2倍の輸送を目指す方針だ。

アリアンスペースのステファン・イズラエルCEO

仏ギアナ宇宙センターの射場では2週間に1回のペースでロケットを打ち上げる能力があり、すでに商用衛星21基、政府系衛星9基の合計30基の宇宙輸送を受注している。イズラエルCEOは「アリアン6は最低でも31年までは活用するロケット。顧客にとっても長期に活用してもらえるよう運用したい」と強調した。

世界中で宇宙開発が加速する中で、宇宙に衛星などを運ぶ輸送手段であるロケットは必要不可欠だ。宇宙分野に参入する企業やベンチャーが増える中で、衛星の打ち上げ需要は年々増え続けている。宇宙輸送企業の老舗であるアリアンスペースのロケットの打ち上げが多くなることで、宇宙開発がより促進することにつながると期待される。

日刊工業新聞 2024年10月07日

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