半導体の先進後工程「アドバンスドパッケージング」で新拠点、ラピダスの野心的な目標
「後工程」の研究開発加速
ラピダスの先進後工程「アドバンスドパッケージング」の研究開発が本格化する。セイコーエプソンの千歳事業所(北海道千歳市)に拠点を開き、2026年4月から同拠点で研究開発を始める。アドバンスドパッケージングはラピダスが目指す人工知能(AI)半導体にとって不可欠な技術となる。27年の量産開始に向け、前工程とともに技術確立を目指す。(小林健人)
ラピダスとセイコーエプソンが3日、千歳事業所内の研究開発拠点の着工に合わせ記者会見を開いた。ラピダスの小池淳義社長は「拠点の着工で後工程技術の足がかりができた」と研究開発の加速に向けた意義を語り、セイコーエプソンの小川恭範社長も「国家プロジェクトに貢献できて嬉しい」と述べた。
ラピダスは同拠点に9000平方メートルのクリーンルームを設ける。25年4月から装置搬入を始め、26年4月に稼働する。
従来、半導体受託製造(ファウンドリー)は後工程を半導体後工程請負業(OSAT)に外注することが多かった。一方、前工程での回路の微細化だけで半導体の性能を高めることが難しくなってきた。そこで半導体を複数接続するなど、各社はアドバンスドパッケージングの研究開発を加速している。近年、台湾積体電路製造(TSMC)などもアドバンスドパッケージングへの投資を進め、内製化に着手している。
AIの普及はアドバンスドパッケージングへの追い風となる。現在、AI向けに使われる半導体デバイスでは、画像処理半導体(GPU)とDRAMを複数積層する広帯域メモリー(HBM)を微細な配線加工などで密接に接続する。今後、AI半導体の性能をさらに向上させるには、より多くのロジックやメモリーを密接に接続する必要性が高まる。
ラピダスが目指す先は野心的だ。現在多く使われるシリコンウエハーではなく、パネルを採用したチップと基板をつなぐ中継部分の「インターポーザー」やチップ同士を貼り合わせる「ハイブリッドボンディング」を開発する方針だ。これらの技術は多くのファウンドリーなどが研究開発に取り組んでいるが、歩留まりの向上や性能向上など課題は多い。一方、ラピダスの折井靖光専務は「米IBMや独フラウンフォーファー研究機構などと研究開発に取り組んできた。ここから一気に加速する」と自信を見せる。各社も開発を進める中、後発のラピダスも技術開発で追い上げ、実用化を目指す。
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