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ANA・JALのシステム障害、ダメージを最小化できるか

ANA・JALのシステム障害、ダメージを最小化できるか

Aviation Wire提供

 航空会社のシステム障害が相次いでいる。全日本空輸(ANA)は3月22日に国内線の予約システム「エイブル」で、4台のデータベースサーバーを同期するネットワーク中継機が故障し2日間で148便が欠航した。日本航空(JAL)も1日に、機体の重心などを計算する重量管理システムの修正プログラムにミスがあり、グループ会社を含めて50便が欠航。両社は現在、さまざまなシステムで改修を進めている。障害を未然に防ぎ、起きたとしても欠航や遅延を最小限にする必要がある。次善の策ではシステムを供給するベンダーとの情報共有が欠かせない。

 ANAの障害は基幹システムで発生したため、早朝から空港は大混乱となった。欠航は2日間にわたり、エア・ドゥやスターフライヤーなど、システムを共有する関係会社にも波及した。国土交通省はANAの障害を受けて、他の航空会社にもシステムを総点検するよう、指示を出した。

 JALのシステム障害は、その矢先に起きた。JALの重量管理システムは、独ルフトハンザシステムズのもので、2014年1月に導入。それまで、30年以上前に開発した自前のシステムを使っていたが、機能を追加する度に複雑になり、保守のコストも重くなったため、外部ベンダーのパッケージを採用した。

 現在、ANA、JALともにシステムの改修を進めているが、両社に共通しているのはオープン化だ。中でも国際線の予約システムは、両社ともにスペインのアマデウスが開発する「アルテア」を採用。ANAは15年4月に導入し、JALは17年の移行を目指している。

 アルテアは世界の航空会社で採用され、すでに実績のあるシステム。だが、JALのシステム障害は、ベンダーの修正プログラムのミスが原因だった。航空のシステムはベンダーが各航空会社の要望を受け、都度システムを修正する。障害の原因となった修正はJALが求めた機能ではなかったという。オープン化が進めば、ベンダーとの情報共有の問題はリスクになり得る。

 JALは対応策として、本番システムの7―8割の機能しかなかったバックアップシステムを増強する。ANAは予備機に切り替わらなかったという事象を受け、システムの一部を改修。6月までにエイブルを総点検し、対策を講じる。

 両社の障害は一部の機器やプログラムで起きたものだが、運航便数が多いだけに、影響は大きくなる。企業活動へのダメージも少なくない。障害をゼロにする対策と並行し、バックアップ体制の強化やベンダーとの関係強化など、被害を最小限にする対策は待ったなしだ。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞2016年4月13日生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
システムのオープン化はANA、JALだけでなく、世界中の航空会社の潮流なのですが、今回のJALの障害で気になったのは、JALが求めた修正プログラムではないものが原因になったと言うこと。同じシステムを使っていても、完全に同じ条件下にあるわけではないはずで、その辺りの対策をどうするか、ユーザー側の航空会社がリスクとして捉えないといけない部分なのかもしれません。

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