ニュースイッチ

LINEヤフー発足1年、できたこと・できなかったこと

マーケ高度化、企業を開拓

ヤフーやLINEなどが合併し、LINEヤフーとして発足してから10月1日で1年となる。2025年4―6月をめどにLINEとヤフーの法人向けサービスの利用に使う企業アカウントを連携するなど、LINE公式アカウントを軸に自社サービス群をつなげる「コネクトワン構想」が具現化し始めた。まずはLINEとヤフーの連携を着実にした上で、スマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」とのID連携を目指す。(編集委員・水嶋真人)

「(LINEヤフーの各種サービスを利用する)企業向けの基盤作りで進捗(しんちょく)を示せた。この基盤上で、どんなサービスを生み出していくかを示したい」。LINEヤフーでマーケティングソリューションカンパニーの最高経営責任者(CEO)を務める池端由基上級執行役員は、合併後1年の振り返りと2年目の抱負をこう説明する。

コネクトワン構想では、豊富な検索データを基に消費者の購買行動につながるマーケティングができるヤフー、企業が自社アカウントを通じて友だち登録した消費者に情報を発信できる「LINE公式アカウント」を起点とした顧客獲得に優れたLINEの強みを連携。同アカウントを軸に集客から顧客情報管理(CRM)、データ分析までを一元管理できる総合基盤を確立する。

LINEヤフーの法人向けサービス利用企業は現状、LINEやヤフーのサービスごとに公式アカウントの登録が必要となる。今後はLINE公式アカウントを軸に全てのLINEヤフー法人向けサービスを連携することで、例えばクーポン配布などLINE公式アカウントで設定した情報がLINEだけでなくヤフーの各種サービスでも表示できるようにする。25年4―6月にはLINEヤフーの各種サービスのコンテンツ管理システム(CMS)を単一基盤上で管理可能にする予定だ。

LINEヤフーは合併後、LINEとヤフーのユーザーアカウント連携を進めた。だが、池端上級執行役員は「顧客体験を連携させるためには企業側のアカウントも連携しなければならない」と力説する。LINEアプリで広告を見た消費者が来店した店舗のLINE公式アカウントに友だち登録して獲得したクーポンを使って買い物をする。帰宅後にヤフージャパンのポータルサイトに表示された同店舗の「既存顧客は20%オフ」の広告を見てヤフーショッピングで同じブランドの別の商品を購入。今度は得意客限定ファミリーセールをLINEトークで案内する―。企業の公式アカウント連携でLINEとヤフーの各種サービスを行き来する消費者の体験をつなげられる。以前よりも多くのマーケティングデータを得られ、人工知能(AI)を用いた分析や商品提案も高度化できる。

一方で課題もある。LINEの利用者情報漏えい問題もあり、24年度中とされたスマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」とのID連携は無期延期となった。池端上級執行役員は「(延期は)残念だが、LINE公式アカウントを軸としたサービス連携が進まなければ何の意味もない」と指摘する。PayPayとのID連携までの間に自社サービスの連携を着実に進めることがLINEヤフー2年目の重点目標となる。

日刊工業新聞 2024年09月30日

編集部のおすすめ