東京エレクトロン、米アプライドの統合破断で競合メーカーは胸をなで下ろす!?

半導体微細化の限界問題は残されたまま。デバイスメーカーを巻き込んだ合従連衡は不可避

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東京エレクトロンの東社長とアプライドのディッカーソンCEOは約30年の付き合い
 東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズの経営統合計画が破談になった。ほっと胸をなで下ろしたのは、競合の半導体関連装置メーカーではないか。経営統合が発表されたのは2013年9月24日。その直後に日刊工業新聞では強者連合誕生による競合他社の「衝撃」と「脅威」をレポートしている。半導体業界は既存技術の延長による微細化は限界に近づき、装置業界は開発費の高騰に悩まされている。デバイスメーカーは米インテル、韓国サムスン電子、台湾TSMCの大手3社の力が強まっており、装置側とデバイス側の関係はさまざまな思惑が絡み合っている。業界再編の動くはまだ燻り続けるだろう。

<日刊工業新聞2013年09月26日最終面から抜粋・一部修正>
 2013年9月25日、アドバンテストと新川が業績の下方修正を発表した。アドバンテストは14年3月期の当期損益を前回予想の98億円の黒字から25億円の赤字に修正。新川は13年4―9月期の当期損失を前回予想の14億円から18億円に修正し、赤字が拡大する。アドバンテストは7―9月にスマホ市場が減速し、半導体メーカーからの需要が伸び悩んだことが要因。当期赤字は3期連続となる。

 会見したアドバンテストの松野晴夫社長は「半導体製造装置は右肩上がりに伸びていく市場ではない」とした。その上で、東京エレクとアプライドとの経営統合について「(今後の半導体製造装置業界は)厳しいという認識が共通していたと感じた」と漏らした。

 半導体製造装置業界は危機感を募らせている。半導体メーカーとの力関係をどう維持するか、激しい市況変動にどう対応するかという課題を突きつけられているためだ。半導体メーカーでは、米インテル、韓国サムスン電子、台湾TSMCが圧倒的なシェアを有する。上位3社で業界全体の設備投資の7割を占め、装置メーカーの業績を左右する。

 半導体メーカーとの規模に大きな格差が生じ、装置メーカーの立場は弱まっている。「下請けのようになることに対し危機感を持つ装置メーカーは多い」(証券アナリスト)。またスマホの主戦場が先進国から新興国に移ったことで半導体の市況変動も激しくなった。装置メーカーの業績も影響を受ける。安定成長を目指すには規模拡大での経営基盤強化が不可欠だ。

 世界1位と3位が経営統合する強者連合の誕生は装置業界に大きな影響を及ぼす。統合により製品ラインアップが充実し、製造工程で必要となる装置の多くをワンストップで提供できる体制を整えれば、他社が入り込むことは難しくなる。半導体・ディスプレー製造装置の業界団体SEMIによると12年の半導体製造装置の世界販売額は約370億ドル(前年比15%減)。リーマン・ショック前の07年から10%程度低い水準だ。

 半導体製造装置業界では過去の合従連衡は少なく、中堅・中小企業も多い。松野アドバンテスト社長は「当社の属する半導体テスター分野では再編はないとみているが、それ以外の半導体製造装置分野ではいつ再編が起きても不思議ではない」と指摘する。「東京エレクとアプライドの経営統合は競合他社にとっては相当なマイナスインパクト。中堅以下のメーカーは厳しい。統合も撤退もあり得る」(証券アナリスト)との声も挙がる。今後、業界再編が加速する可能性が高い。
 
【インタビュー/大日本スクリーン製造・橋本正博社長(現SCREENホールディングス取締役副会長)】「1、2位でないと生き残れない」

 日米連合による巨大企業誕生は半導体製造装置業界に衝撃を与えた。大日本スクリーン製造の橋本正博社長に業界に与える影響や、今後の見通しを聞いた。

 ―2社の統合についての感想は。
 「サプライズだ。ただ半導体メーカーが寡占化し、業界の成長率が鈍化する中で製造装置業界でもM&Aが進み、それぞれの工程で1位か2位でないと生き残れない状況にはなっていた」
 ―大日本スクリーン製造の製造装置事業への影響はありますか。
 「当社がトップの洗浄装置、2位のコーターデベロッパーとも、東京エレクトロンとは競合してもアプライド・マテリアルズとは競合していない。コーターデベロッパーではもともと得意なメモリー向け以外でも受注を獲得しており、シェアも拡大しつつある。今回の統合でシェアが大きく変わることはない」

 ―統合会社は多くの工程で存在感を示すことになりますが。
 「あらゆる工程に対応するという装置のデパート化がどれだけ強みとなるのかは、半導体メーカーがどう反応するかによる。ターンキー(全工程の一括受注)ビジネスですべて対応できれば良いだろうが。半導体大手は技術開発を先へ先へと進め、装置メーカーに対しても量産対応だけでなく先端技術の開発を求めている。だからそれぞれの工程で強くなければ評価されない」

 ―その開発費負担が重くなっています。
 「(直径)450ミリメートルウエハーへの対応で、露光装置は半導体メーカーが開発費を負担してくれるが、洗浄装置などほかの工程はそうしたことにはなっていない。各社が単独で行う。だから統合によって、巨額な開発費を補完し合いたいという思惑があるのかもしれない」
 
<関連記事>
 東京エレクトロンは27日、米アプライドマテリアルズとの経営統合を断念したと発表した。米国の競争当局の承認が得られなかったことが理由。両社は2014年後半に経営統合すると13年9月に発表したが、その後、各国の競争当局との調整が難航していた。
 
 同日会見した東哲郎東京エレク会長兼社長は、「(米当局の対応に)納得はいかないが、謙虚に受け止めるしかない」と語った。両社で統合計画改善案を米当局に提出したが、その実効性ついての見解を巡って折り合いがつかなかった。

 アプライドと、東京エレクはともに半導体製造装置の世界大手で、統合により技術開発力を高める狙いだった。東社長は「単独でも統合後に描いていた形を実現できるよう努力する。いろいろな提携もあるかもしれない」と語った。

【解説】
 「非常に残念」―。米アプライドマテリアルズとの経営統合を断念した東京エレクトロン。27日の会見では東哲郎会長兼社長は幾度となく悔しさをにじませた。

 アプライドと東京エレクはともに半導体製造装置の世界大手だが、製品分野の重複は少ない。外部の法務アドバイザーにも相談した上で「常識的な観点からすると競争法には引っかからないと判断していた」という。

 だが実際には当局の承認が下りたのは、イスラエルなど数カ国に留まっていた。また装置メーカーの発言力が高まることに「半導体メーカーからの反発も少なくなかった」(業界関係者)。半導体製造装置の強者連合への警戒心は、東社長の想像を超えて大きかった。

 半導体の技術革新は転換期にある。開発費負担が巨大化していることが両社を経営統合に促した。この状況は変わっておらず、装置メーカー各社は対応を迫られる。アプライドと東京エレクの経営統合が否定され、大規模な合従連衡は起こりにくくなったが、再編の火種はくすぶっている。(後藤信之)

日刊工業新聞2015年04月28日1面/ 電機・電子部品・情報・通信面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

2013年の統合発表直後、日立製作所の首脳に影響を聞いた。子会社の日立ハイテクノロジーズや日立国際電気などで装置関連の事業を持つ。「再編戦略は白紙から練り直し」。これでまた各社とも白紙になった。

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