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水素普及の推進役「FCトラック」で風穴、経産省が社会実装支援を加速する

経済産業省が水素普及の推進役として、燃料電池(FC)商用車の社会実装支援を加速する。輸送需要が大きく独自の水素戦略を実施している都道府県を重点地域とし、集中支援を講じる方針だ。FCモビリティーは車両価格も水素ステーション設置費用も高額で、普及においては“インフラが先か利用が先か”という膠着(こうちゃく)状態に陥っている。水素利用量が多く充填時間が短いといった特性を生かせるFC商用車で風穴を開け、普及モデルの確立を図る

FCモビリティー市場の確立には、水素や車両価格の低減、水素ステーションの大型化や事業性確保といった諸課題を同時に解消する必要がある。これまでも購入費やステーション整備費などを支援してきたが、面的な広がりは見込みにくい。一定規模の需要地で一体支援すれば自動車メーカーやインフラ事業者などの予見性も高まり、導入へのハードルが下がりやすくなる。

経産省は2024年度末にも10件弱の重点地域を選定し、25年度から支援を始める計画だ。選定基準案としては、貨物の輸送量が年50億トンキロ以上で、高速道路の大型車走行台数が1日1万台以上の都道府県を対象とする。その上で30年度末までのFC商用車導入目標を3%以上にすることや、自動車メーカーや運送会社、ステーション事業者などが参画する協議会の設立、車両購入やステーション整備などで独自支援を講じていることなども支援条件に求める。

経産省は市場の確立には30年までにFC大型トラックで5000台、小型トラックで1万2000―2万2000台の普及が必要だとする。一方、利用が広がれば水素調達費の増加や、水素ステーションの稼働率向上に伴う部品や機器の交換コスト上昇といった新たな課題も想定される。今回の集中支援は本格普及を見据えたベンチマークとしても期待される。

日刊工業新聞 2024年9月26日

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