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脱炭素対応の原付一種…スズキがパナ系と協業で開発推進、「電動モペッド」の魅力

脱炭素対応の原付一種…スズキがパナ系と協業で開発推進、「電動モペッド」の魅力

原付一種の電動モペッドは運転免許やヘルメット着用などが必須で認知度向上が課題となる

スズキはペダルをこがずに走行できる電動モペッド(ペダル付き原動機付き自転車)「e―PO(イーポ)」の開発を推進している。パナソニックサイクルテック(大阪府柏原市)と協業。電動アシスト自転車と電動バイクの良さを両立し、日常の移動のストレス軽減を狙う。総排気量50cc以下の現行の原付一種は、25年11月からの新たな排ガス規制に適合した開発が困難なことから代替製品の開発が進む。カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応の新しい移動手段として提案を目指す。(間瀬はるか)

イーポは都心部に住み、通勤・通学などで片道約4キロメートルの短距離を移動する利用者をイメージし開発に着手した。スズキ二輪事業本部二輪パワートレイン技術部技術企画課の神谷洋三課長は「原付一種の利用者のうち半分は、1日10キロメートル以下しか乗車しないことを踏まえターゲットを絞った」と説明する。

車両や制御開発をパナソニックサイクルテック、諸元決定や品質テストなどをスズキが担当する。パナソニックサイクルテックの折り畳み可能な電動アシスト自転車「オフタイム」をベースに開発。折り畳み式にすることで車に積載して移動先で利用でき、保管場所も確保しやすくなるとみている。

パナソニックサイクルテックの電動アシスト自転車と共通のリチウムイオン電池(LiB)を採用。容量は16アンペア時で約5時間でフル充電可能だ。車体の重量は23キログラム(公道走行テスト車)で女性でも取り回しがしやすい。

23年の「ジャパンモビリティショー」で初披露して以降、ミラーやライトを法規に対応した形状にするなど改良を進めた。早期の市場投入を目指すが、具体的な時期は未定だ。

状況に合わせて三つの走行モードを選べる。「フル電動走行モード」は航続距離が約20キロメートルで、スロットルを回すことでぺダルをこがずに走行できる。「アシスト走行モード」はモーターのアシストにより、軽くペダルをこいだだけでも原付一種として十分な走行を実現する。こぎ方次第だが航続距離は約40キロメートルとなる。このほか電池切れが心配な時にペダルのみで人力走行できる「ペダル走行モード」も用意した。

使用例として、スズキ二輪事業本部二輪営業・商品部の福井大介チーフエンジニアは「夏場の出勤時はフル電動で爽快に走り、アシスト走行モードで帰宅。冬場はペダルモードで体を動かすなど季節の移り変わりを風で感じながら使い分けられる」と魅力を伝える。製品化に向け、バッテリーはそのままに制御部分を改良し航続距離延長を目指すなど、両社の協業を加速する。

原付一種は運転免許やナンバープレートの装備、自動車損害賠償責任保険(自賠責)の加入が必要で、ヘルメット着用も義務となる。国内では新興メーカーの電動モペッド投入が進むが、原付一種としての認知が乏しく無免許運転やヘルメット不着用などの摘発事例もある。モーターを止めた状態で人力のみでペダル走行しても、歩道は走れない。

スズキが24年夏に浜松市や大阪府で実施した公道走行調査では十分な性能を示した一方で、自動車運転者から原付と認識されず注意を受ける状況もあったという。利用者のみならず、周囲の認知拡大も課題となりそうだ。

日刊工業新聞 2024年9月25日

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