黒鉛電極・S&Lの止血急ぐ…東海カーボン、SiCウエハーで成長
東海カーボンは次世代の成長に向けた構造改革を推進する。祖業の黒鉛電極では生産能力の最適化を踏まえ、中長期的な需要増に向けて強みを生かす。構造改革を検討するスメルティング&ライニング(S&L)を含め、止血しできるだけ早い営業黒字化を目指す。一方、成長を見込む分野がファインカーボンだ。新たな強化策も打ち出し、2030年には足元の倍近い「売上高1000億円になる期待感はある」(長坂一社長)としている。(山岸渉)
黒鉛電極は世界的な鉄鋼生産低迷による需要減少に加え、中国・インド勢による低価格製品の流入なども響く厳しい事業環境だ。東海カーボンは構造改革として、25年7月までに日本と欧州における黒鉛電極の生産能力を合計で約4割削減する計画だ。グローバルでは25%の生産能力の削減になる。長坂社長は「品質の向上も伴い中国・インド品が一定のシェアを取っている。必要な量だけを生産し、販売すると割り切った」と説明する。
今後見据えるのは、脱炭素化に向けた電炉シフトへの対応だ。需要が高まる時期は地域によってまだら模様だが、30年に向け日本、米国、欧州での需要増を想定。特に電気炉が大きくなることで黒鉛電極も直径28、30、32インチという大口径の需要が増える見通しだ。一連の大口径を手がけられるのは東海カーボンを含め少なく、技術力の強みを生かす。大口径に対応する生産体制の整備などに取り組む。
また、アルミニウム製錬用カソードなどを手がけるS&Lは、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーコスト高などの影響を受け、厳しい事業状況だ。長坂社長は「まず黒鉛電極とS&Lの出血を止めてプラスに持っていく。S&Lも(構造改革など)何らかのことをしていかないといけない」と気を引き締める。
一方、成長を期待する分野が、半導体製造装置部材などのファインカーボンだ。多結晶炭化ケイ素(SiC)ウエハーを開発し、仏ソイテックと戦略提携した。多結晶SiCウエハーをソイテックに供給。ソイテックが単結晶SiCウエハーと貼り合わせて「貼り合わせSiCウエハー」を作り、コスト競争力などを特徴とする。
東海カーボンは多結晶SiCウエハーの需要増を見据え、生産体制を強化する計画だ。神奈川県茅ケ崎市に工場を設け、24年内に完成する予定。長坂社長は「本格的な展開は26年からだろう。スタートは(直径)6インチだが、8インチにサイズアップする可能性も高い」と想定している。
ファインカーボン事業の売上高は24年12月期予想で580億円。30年に向けて同社の事業規模のうち「カーボンブラックに次ぐ2番目になるのではないか」(長坂社長)と期待する。黒鉛電極やS&Lの構造改革に加え、ファインカーボンの成長を通じて次世代の変革につなぐ。
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