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「自動運転」レベル4実現へ、インフラ実装技術を追う

レベル4に向けてインフラに実装する自動運転技術(上)
「自動運転」レベル4実現へ、インフラ実装技術を追う

アイサンテクノロジーはライダーで得られる点群データを基に地図を製作する技術を開発する

遠隔監視など死角カバー、他用途開拓でコスト減

愛知県と科学技術交流財団(愛知県豊田市)が特定条件・領域での運転手なしの自動運転「レベル4」の実現に向けて、東海理化、アイサンテクノロジー、名古屋大学などと関連技術の研究を進めている。レベル4で義務付けられる遠隔監視を支援する映像関連技術や、自動車のセンサーで検知できない死角部分をインフラに設置するセンサーでカバーする技術などを開発中。自動車本体以外に実装する自動運転技術の研究を追った。(2回連載)

レベル4実現に向けた大きな課題は安全性と採算性だ。安全性については死角がある交差点への進入時に、安全確認のための長時間停車や人の介入を要する点をどう改善するかがポイント。そのために「ユーザーの支援と遠隔監視の技術を実装しないといけない」(二宮芳樹名古屋大学モビリティ社会研究所特任教授)。

そこで必要なのが、自動運転車に搭載したカメラの映像を遠隔監視者にリアルタイムで配信する際、通信量を削減するとともに監視をしやすくするように映像をモニターに適切に配置する技術だ。

この研究を東海理化が担当し、複数の車載カメラが送る映像のうち、重複するムダな部分を取り除いて統合する技術を開発している。転送容量が抑えられ、転送の安定化につながる。

また、映像の表示方法の研究も重ねている。例えば複数の映像を組み合わせ、特定の車の視点からその周囲を見渡せるような一つの映像にしたり、必要に応じて、その映像の気になる点を拡大できるようにしたりする技術開発を推進。人間工学の観点から使いやすい車のスイッチ類を作ってきた経験を生かし、監視者が状況を視認しやすい映像にすることを追求している。

各技術の開発においては、技術そのものの低コスト化とともに、自動運転以外の用途開拓を通じて採算性を高めることも普及促進につながる。アイサンテクノロジーが進めているのが、自動運転車の運転時に高性能センサー「LiDAR(ライダー)」で取得している地形の点群データの地図製作への応用だ。

現在、道路や公共施設などの街のインフラの維持・管理に使用する3次元(3D)地図の更新には、道路を走りながら周囲の情報を取得する計測機器を搭載した測量の専用車両を用いる。高精度な3Dデータを取れるが、車両価格が8000万―1億円と高価で、使用には1日に100万円ほどのコストもかかる。

これを自動運転車が稼働中にライダーで取得する点群データの活用で置き換えられれば、コストを抑えられる。実際、同社の実験で点群データをつなげて製作した地図の測定誤差は15センチメートル以内に収まった。縮尺が500分の1の地図であれば、「ライダーも十分適用できる」(大石淳也モビリティ事業本部3DMap事業部部長)という。自動運転車に載せるライダーの用途が地図製作にも広がれば、採算性の向上とそれに伴うコスト低減が期待できる。


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日刊工業新聞 2024年09月17日

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