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「不正送金」被害は過去最高…損保各社、サイバー保険拡充

大手損害保険各社が新たなリスクに対応したサイバー保険の開発に力を入れている。MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、不正送金に対応したサイバー保険を発売。東京海上日動火災保険は、中小企業向け保険でサイバー攻撃による被害の補償範囲を従来のソフトウエアに加え、ハードウエアまで広げた。近年、サイバー攻撃による被害は増加傾向にあり、特に防衛策が手薄になりがちな中小や零細企業に対する脅威の一つになっている。補償内容を充実させ、顧客ニーズに対応する。(大城麻木乃)

三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は、不正送金やビジネス上のなりすましメールによる被害を補う「資金損害補償特約」を開発した。

警察庁によると、2023年の不正送金の被害件数は前年比約5倍の5578件と、過去最高を更新した。銀行などを装ったフィッシングサイト(偽サイト)へ誘導する電子メールや取引先を装ったメールによる詐取被害が増えている。

こうした新たなリスクに備えるニーズの高まりを捉え、新たな補償を開発した。年間売上高1億円の会社の場合で保険料は5万円からで、最大500万円まで被害額をカバーする。外資系損保では同様の補償はあるが、日系損保では業界初という。

東京海上日動は中小企業向けの事業リスクに備える保険で、新たにサイバー攻撃被害に遭ったパソコンやサーバーなどハードウエアの復旧費用の補償を10月に始める。従来はデータやウェブサイトの復旧費用などソフトウエアが補償対象だったが、「中小企業の顧客からハードウエアまでカバーしてほしいとの声が高まっていた」(東京海上)という。

サイバー攻撃は年々手口が巧妙化している。大企業はセキュリティー会社などと連携して対策を強化する傾向にあるが、資金や人材が限られる中小や零細企業は後手に回りがちだ。

損害保険ジャパンは同じグループのSOMPOリスクマネジメント(東京都新宿区)と連携し、保険とサービスを一体化したグループ統一ブランド「SOMPOサイバーセキュリティー」を設け、コンサルティングとセットでサイバー保険を提供する。

損保各社は主力の自動車保険が伸び悩む中、新たな商機を模索している。世界的にサイバーリスクが顕在化する中で、商品開発やサービス拡充を加速し、顧客獲得につなげる狙いだ。

日刊工業新聞 2024年09月18日

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