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日本勢が世界的に先行…自然関連情報、開示68社超

本社調べ

実績示し基準作り優位に

国際組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が2023年9月19日に公開したフレームワーク(枠組み)を参考に、事業活動と自然との関係を開示する企業が増えている。日刊工業新聞社の集計によると、少なくとも68社以上が開示した。世界的にも日本の開示数は多いと見られ、開示内容の評価でも日本勢が優位となる基準を作れそうだ。

枠組みは、自然の減少が経営に与えるリスクと影響を回避する対策を明らかにする項目を整理した。世界中の企業が同じ項目で開示できる。投資家は環境制約が強まった将来も存続している企業かどうかを評価できる。

日刊工業新聞社は、TNFDの呼びかけに応じて早期の情報公開を表明した日本の117社(11日時点)のウェブサイトを調べた。枠組みは広範囲の開示を求めているが、一部でも記載を確認できた企業が68社だった。また「トライアル分析」(住友商事)も含めた。

開示形態はさまざまだった。アサヒグループホールディングスは6月発行のサステナビリティーレポート(サスレポ)で開示。他にも大和ハウス工業ソニーグループなどもサスレポに掲載。クボタ積水ハウスなどは統合報告書に掲載した。

 

自然関連情報を独立させた「TNFDレポート」の発行も11社あった。NECは23年に続いて2冊目を発刊。8月に公開した中部電力は、水力やバイオマス発電などの電源別にリスクが生じた場合の財務への影響と、リスクを回避する対策を開示した。すでに3版目となる東急不動産ホールディングスのレポートは約90ページあり、リゾート事業や都市開発を分析している。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みと統合した開示もあった。TNFD、TCFDとも枠組みの構造が同じであり、企業も理解しやすいようだ。ブリヂストンや日本生命保険、明治安田生命保険、東海理化などが統合していた。

TNFDに開示を表明していなくても、開示した企業があると見られる。9月にサスレポや統合報告書を発刊する企業も多く、さらに開示が増えそうだ。今回、調べた中には「25年以降情報を開示する」(セイコーエプソン)と予告する企業も見られた。

TNFDがまとめている開示表明企業で、日本の117社は国・地域別トップ。2位の英国の60社、3位の台湾の22社を大きく引き離している。枠組みが公表されて1年だが、自然再生への貢献を含め、投資家の評価方法が定まっていない部分がある。先行する日本勢は実績を示すことによって、日本企業が優位となる基準を作れるチャンスがある。

日刊工業新聞 2024年09月18日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
20日の閣議後の会見で、伊藤環境相は「開示に合わせて企業価値向上につながるネイチャーポジティブの実践が進んだと認識している」「ネイチャーポジティブ経営への移行は先進的な企業で始まったばかり。一層、進むように環境省として取り組む」と語りました。世界に先駆けて開示した企業の努力が報われてほしいです。

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