成長領域に「AI」…技術展示会に見る、シャープのこれからの収益源
シャープの技術展示会「シャープTech―Day(テックデー)’24」が17日、東京都千代田区で開幕した。コンセプトモデルの電気自動車(EV)や生成人工知能(AI)による対話型サービスなどを展示。エンドユーザーや取引先と接点を作りつつ、早期の事業化を目指す。液晶パネルをはじめ事業の構造改革を進める一方で、限られた研究開発費をAIやEVなどに集中して投資し、収益源となる新規事業を育てられるかが問われる。(大阪・森下晃行)
「どっちのチームを応援しているの」。サッカーの試合を映したテレビに話しかけると「私は○○を応援しているよ!カウンターが見ものだね」と女性のアバターが応じる。生成AIによる対話型ユーザーエクスペリエンス(UX)の一例だ。
テレビ側に搭載したエッジAIで個人情報を扱いつつ、クラウドAIと組み合わせて複雑なコミュニケーションを行う。アバターと友人のような会話を楽しんだり、買い物をしたりできるという。
52の展示テーマのうち、タイトルに「AI」とつくものは10以上。AI搭載の新たなウエアラブルデバイスも17日に発表するなど、成長領域として注力していることが伺える。
シャープの沖津雅浩社長は講演で「当社は人々の生活空間を主な事業領域としている」と説明し、AIやEVで「当社らしい新たな価値創出に挑戦していく」と強調した。種谷元隆最高技術責任者(CTO)は、家電などを通じてAIを自然に使いこなせる生活空間を構築し「ナチュラルな生活を取り戻す場」を目指すと意気込む。
一方、新たな技術や製品を開発する上では、のしかかる経営課題の解決が急務だ。シャープは業績悪化の主因だった液晶パネルに関して事業の撤退や縮小を進める。大型液晶パネルを生産する堺工場を稼働停止しており、敷地や建屋を太陽電池の生産やデータセンターに提供する予定だ。
中小型液晶の亀山工場(三重県亀山市)なども生産能力を縮小した。これらの構造改革により2024年度の連結売上高は前期比9・6%減の2兆1000億円を見込む。
鴻海傘下に入った16年以降、売上高に対する研究開発費の比率は減少傾向だ。近年は3%前後で推移し、24年度は3・8%を見込む。成長領域を創出するための研究開発費を今後も確保するには、売上高の減少に歯止めをかける必要がある。
こうした状況で種谷CTOは「時代の先をいくところに集中投資する」と方針を示す。2回目となる今回の展示会で紹介する52テーマのうち、AIアバターやクロスリアリティー(XR)などは23年の展示会から引き続き出しており、特に集中するテーマと言える。
シャープは各テーマを「3年以内に実用化したい」(種谷CTO)としており、収益に結びつく成果をスピード感を持って生み出すことが求められている。
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