〝たつのから世界へ〟…eラーニングに革新もたらした企業が目指す「究極のゴール」
色あせた1枚の写真にパソコン画面をのぞき込む幼児が映っている。当時2、3歳の西村洋一郎さんだ。
現在は42歳。eラーニングシステムを開発・運営するlearningBOX社長だ。2016年、社名と同名のシステムを開発。後発だが、1200社が社員教育に採用するまでになった。本社は兵庫県たつの市。「究極のゴールは、世界一のeラーニングサービス提供企業」(西村さん)。“たつのから世界へ”が合言葉だ。
静かに闘志を燃やす西村さんは幼少からコンピューターに親しみ、大学入学前にはプログラムを書けた。慶応義塾大学院理工学研究科でソフトウエア工学を研究し、IT企業に就職した。
11年、父の他界をきっかけに故郷のたつの市に戻った。地元企業のシステム開発を請け負いながら生計を立てていると、コンサルタントの森和宏さん(現在の取締役)が訪ねてきた。西村さんが開発したクイズシステムに興味を持った森さんは「成績や人の管理を組み合わせたら商売になる」と提案。クイズシステムは、プログラミングが分からなくても問題を作って出題できる。同社のeラーニングシステムの原型だ。
eラーニングは技術が停滞し、利用する企業がサーバーごと購入するのが一般的で教材の再編集が難しかった。同社のeラーニングはインターネットを介して利用するSaaS型なので、サーバーの購入が不要。社内の業務マニュアルや研修教材を登録でき、教材作成も可能だ。小規模から導入できる手軽さも受け入れられた。
人材に投資する「人的資本経営」が叫ばれ、社員教育の重要性が高まっている。しかし人材の流動性の高まりや人手不足があって、研修担当者の負担は増している。同社のeラーニングは社員教育の課題解決に貢献する。「社内に蓄積された業務知識を伝承するために活用してほしい」と言葉に力を込める。
eラーニングに革新をもらたした同社の社員70人のうち、これまでに移住者は22人。地方に人材を呼び込んでおり、地元にも貢献している。
【略歴】にしむら・よういちろう 12年に龍野情報システム(現learningBOX)設立。息子は小学生。進学校が都市部に集中する現状もあり、どこにいても質の高い教育を受けられる環境づくりにも意欲を燃やす。