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JALは「旅アカデミー」開校…航空、学びでつくる地域とのウィンウィン

JALは「旅アカデミー」開校…航空、学びでつくる地域とのウィンウィン

ウェブ上などで公開している「JAL FUTURE MAP」

航空会社が乗客と地域とのつながりづくりの取り組みを拡充している。日本航空(JAL)は学びを通じて地域とつながる「旅アカデミー」を開校。全日本空輸(ANA)は地域の魅力を独自目線で掘り下げる「偏愛日本プロジェクト」を始めた。人口減少が進む中、より強い結びつきを持つ“関係人口”を増やし、地域を活性化する。地域と航空のウィンウィンの関係をつくる。(梶原洵子)

人口減少の中で、航空会社にとって地域活性化は一層重要な活動になっている。地域が元気になれば、移動需要が生まれ、航空会社の社会的な価値も高まる。コロナ禍で注目された客室乗務員(CA)の地域駐在だけでなく、現在も形を変えて活動は続いている。

JALは活動強化の一環で、関係・つながりの総量の数値化とモニタリングを開始した。2030年度に23年度比1・5倍の660万人・回に拡大を目指す。関係・つながりの総量とは、特定の地域に継続的に多様な形で関わる人の数(関係人口)と地域の関わり度合い(同一地点への平均移動回数)を掛け合わせた数値だ。

7月には何度も訪れたくなる仕組みづくりに向け、「関係・つながり創造部」を新設した。未来のアイデアをまとめた「JAL FUTURE MAP」をウェブ上などで公開し、多くの人とビジョンを共有して仲間を増やしながら活動を推進する。具体化の第1弾が、8月に開始した学びを目的とした地域体験プログラム「旅アカデミー」だ。地域で豊かな生き方を実践する人から人生のヒントなどを学び、深いつながりの創出を狙う。

ANAグループはANAあきんど(東京都中央区)を中心に、多様な地域創生事業を展開している。例えば、農園プロジェクトでは、自治体や地元農家と連携して現地に足を運んでもらえる企画を立て、関係人口の増加を目指す。農家体験企画や機内食への採用、みかんの木のオーナー制度など、活動の幅は広がっている。

9月からは新たに、NKB(同千代田区)、レッツエンジョイ東京(同)と連携し、日本各地のテーマやスポットをコミュニティーメンバーの独自の“偏愛目線”で深掘りする「偏愛日本プロジェクト」を開始した。第1弾は「国道16号」だ。地域の隠れた魅力を発掘し、機内誌などで発信することで、関係人口・交流人口の拡大につなげる。「地域の皆さまと魅力あふれる地域社会を共創することで交流人口・関係人口の拡大につなげる。それを新たな価値創造に繋げ、ANAグループの収入基盤にも貢献する」(ANAあきんど)。

何度も訪れたい場所になるには、万人受けしなくても、個人に刺さるニッチな魅力や体験、現地との個人的なつながりなど“個”がキーワードになる。そうしたものをいくつ提供できるか。打ち手を増やすことが重要だ。

日刊工業新聞 2024年09月16日

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