開発者が語るホンダFCVの魅力

中型セダン級の加速性能で「乗って楽しい車」

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クラリティ フューエルセル
**本田技術研究所 清水潔氏
 「セダンは5人乗りであるべき」、「航続距離が短い」。2007年から4年半米国に駐在した時、前モデル「FCXクラリティ」のユーザーのインタビューに立ち会って厳しい声をいただいた。燃料電池車(FCV)は環境に優しいだけではだめだ。ゆとりある居住性や航続距離の拡大でエンジン車と変わらない使い勝手の良さが重要だと思った。

 居住性を確保するのに、まず考えたのがFCVの心臓部である燃料電池スタックの小型化。燃料電池は数百枚のセルが積み重なって発電するが、1セル当たりの発電性能を1・5倍にして同じ出力でセルの数を30%削減した。さらにセル構造を改良してセルそのものを20%薄型化し、スタックとして従来比33%の小型化を実現した。

 スタックのほか、駆動モーターも小型化して燃料電池パワートレイン全体で、V6エンジン並みの大きさを実現し、FCVセダンとして世界で初めてパワートレインをボンネット内に搭載した。

 これによりバッテリーと水素タンクのレイアウトの自由度が増し、5人がゆったりと乗れるスペースとFCVセダントップクラスのトランク容量を確保できた。航続距離は750キロメートルを達成した。3分で水素を充填でき、ガソリンエンジン車と変わらない使い勝手にした。

 車体構造はボディーフレームとサブフレームを組み合わせ、フロントからリアまでのストレート構造を特徴とした新たなプラットフォームを採用した。乗員を保護するとともに、FCV特有のパワートレインや水素タンクやバッテリーを効率よく衝突から守るようにした。

 クラストップの最大出力を出せるモーターは電動車ならではの静粛性と滑らかな運転感覚を実現し、エンジン車のミッドクラスセダンに匹敵する加速性能を達成した。乗って楽しい車に仕上がっている。
(四輪R&Dセンター開発責任者) 

クラリティ フューエルセル
全長×全幅×全高=4915×1875×1480㎜
車両重量=1890㎏
乗車定員=5人
モーター最高出力=130kW
価格=766万円(消費税込み)
【記者の目・普及を意識も慎重な船出】
 FCVだからといって環境性能だけにこだわるのではなく、エンジン車並みの実用性や快適性を追求している。その姿勢からはFCV普及への強い思いがうかがえるが、初年度200台の小規模生産かつリース販売という慎重な船出となった。量産技術の熟成や使われ方の検証など慎重にならざるを得ない事情は理解できる。だが普及を意識したのであれば一般向けに販売しない限り車の評価は見極めにくい。
(文=池田勝敏)

日刊工業新聞2016年3月30日付自動車面

COMMENT

本紙で随時掲載している自動車の開発者インタビューです。「MIRAI」のトヨタに続き、世界で2社目のFCVメーカーとなったホンダ。5人乗りにしたり、750キロの航続距離を確保したりと、MIRAIとの違いをしっかりと打ち出しているように見受けられます。

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