世にないもの、常に挑戦…創業1世紀、住田光学ガラスが誇る世界トップクラスの技術力
組成材料解明、製品化まで対応
創業1世紀の住田光学ガラス(さいたま市浦和区、住田利明社長)は、後発ガラスメーカーながら、非通信系光ファイバーや軟性内視鏡向けデバイスは世界トップクラスの技術力を誇る。4代目の住田社長は「目先の利益追求より世にないものに挑戦している」と言う。新しいガラスづくりとそのための組成解明に向けて、絶え間ないイノベーションを持ち味としている。(編集委員・山中久仁昭)
住田光学ガラスにはマスコットキャラクターのニワトリ「ナゼ太郎」がいる。「飼われる鶏になるな、放し飼いの鶏であれ」と住田社長は自由闊達(かったつ)な社風を語る。放し飼いされた従業員はやる気と才能、個性を持つ。「アイデアを生み、生かせる場を整えるのが私の仕事」と力を込める。
興味深いのが3カ年の中期経営計画の策定で、毎回数十人の従業員が携わる。役員1人がまとめるが、社長や他の役員はできた時に初めて説明を受ける。目標未達に終わることもあるが「数字を押し付けない。個々が計画づくりを通じ会社の将来を考えることに価値がある」(住田社長)。
同社は開発から溶解、製造まで行う「光学ガラス」、それを非球面ガラスレンズなどに加工する部材・モジュールの「光システム」、光や画像を伝送する非通信系「光ファイバー」、レンズなどを医療用部品に仕上げる「メディカル」の4事業で構成する。浦和の本社のほか、福島県南会津町に主力工場、独ニュルンベルクと中国東莞に現地法人を置く。
飛躍の原動力となったのが1992年、松下電器産業(現パナソニック)の研究所と共同開発した非球面ガラスレンズの量産技術だ。研磨不要の超精密ガラスを使うことで収差を縮め、従来のレンズ複数枚分を1枚で処理できるためビデオカメラなどの小型化に寄与した。
一貫してガラスの組成に力を入れるのは、原材料の組み合わせ次第で光の屈折、膨張、溶解の融点が変わり、機能や性質を大きく左右するからだ。素材からこだわり、必要なら顧客に代わって最終製品までつくるところにグローバルニッチトップ企業の気概がある。
独医療機器メーカーなど約500社と取引をし、売上高に占める海外比率は約50%で過去最高となった。従業員の約1割に当たる約40人が開発部門で働き、技術営業の約15人はみな理工系出身。取得特許は100件を超す。収益のビジョンは非公表だが「人も技術も大きく変わる中、どこまで対応できるかが最大の経営課題」で、目標は「現在の良い状態の維持」(住田社長)。精度良く観たい顧客ニーズにどう応えるか。同社は声高にしなくとも製品ポートフォリオを不断に見直している。
【会社概要】▽創業=1923年(大12)、創立=53年(昭28)10月▽資本金=4976万円▽グループ従業員=約400人▽単独売上高=約60億円(24年8月期)