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リモート会議、会話聞き逃しても大丈夫…AIが要点提示

慶大などシステム開発

慶応義塾大学の今井倫太教授と中西建心大学院生、静岡大学の前川知行助教らは、会話を聞き逃してもポイントを教えてくれる人工知能(AI)システムを開発した。対話文から発言を間引いてAIで文意を作り、完全な対話文から作った文意と比較する。文意が大きく変わる発言を重要なポイントとして提示する。リモート会議などのコミュニケーションが円滑になる。

現地と遠隔のハイブリッド会議などで話題が変わった際に、発言を聞き逃したが聞き返せない場面などを想定する。音声認識で発言をテキスト化して大規模言語モデル(LLM)で解析する。LLMは完全な対話文と発言を間引いた対話文を与えられ、特定の発言をより具体的に言い換えるよう指示される。言い換え文の類似度を比較して大きな差があれば間引いた発言が重要だったと判定する。

会話を全文解析すると計算負荷が膨大になるが、さかのぼって間引く発言を六つ程度に設定してリアルタイム処理を実現した。会話では直近の発言を受けて発言するため、探索範囲を絞り込める。

30人の評価では発言の前にポイントを提示すると会話の唐突さが下がり、明瞭さが向上した。意図的に話がかみ合わない会話をする実験では、提示されるポイントが記憶と一致するため安心感があるとされた。

LLMの性能や会話の内容によっては、LLMの言い換え文生成や類似度計算が変わる可能性があるものの、会話のポイントをつかんで提示できたといえる。コロナ禍を経て遠隔会議が広がり、通信回線などの問題で意識していても聞き逃す場面は増えた。システムでサポートできるとコミュニケーションの円滑化につながる。


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日刊工業新聞 2024年09月10日

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