「ペロブスカイト太陽電池」建物設置へ、自然エネ財団が指摘した課題克服法
自然エネルギー財団(東京都港区、孫正義会長)は、次世代太陽電池として注目される「ペロブスカイト太陽電池」の課題を整理した報告書を発表した。軽量である強みを生かして建物への設置拡大が期待されるが、耐久性とコストが普及への障壁となる。課題克服に向け、政府の支援や設置義務化を提案した。(編集委員・松木喬)
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ペロブスカイト太陽電池の重量は、主流のシリコン系太陽電池の10分の1程度と軽量。重さに耐えられずに太陽光発電の導入を諦めていた建物の屋根や壁面にも取り付けられる。報告書では窓やベランダ・手すり、空港や駅、駐車場、車両も設置可能とした。
ペロブスカイト太陽電池の光から電気エネルギーを作る変換効率は、セル(小型)サイズで24―26・1%で、シリコン系に匹敵する。ただし、ペロブスカイト太陽電池は劣化が速く、年1%低下する。シリコン系は0・5%だ。寿命にすると、ペロブスカイト太陽電池は10年程度だ。
ペロブストカイト太陽電池は原材料が少なく、製造コストを下げやすい。だが「耐久性の低さは、発電コストの点で極めて重要な問題である」(報告書)と指摘する。
発電コストとは、1キロワット時の電気を作る費用。製造コストが高い太陽電池でも、長く使うほど発電コストが下がる。自然エネルギー財団は、30年時点でシリコン系の発電コストを5・5円と予測する。30年の耐久性があるためだ。経済産業省は30年時点のペロブストカイト太陽電池の発電コストの目標を14円に設定している。20年相当の耐久性の確保が条件だが、それでもシリコン系の2倍以上の発電コストだ。
報告書は、耐久性の課題からペロブスカイト太陽電池を「シリコンパネルに代わるゲームチェンジャーというよりも、むしろ建築物への太陽光発電導入への新たな選択肢」とした。日本は太陽光発電を新設できる適地が少なくなったと指摘されるが、屋根や壁面には余地があり、ペロブスカイト太陽電池に期待がかかる。
そこで、報告書は建材一体型太陽電池も含め、建物への導入促進策を提示した。まず挙げたのが、政府からの経済的な支援。続いて、太陽光発電による自家消費率基準の設定を求めた。高さ40―50メートルの高層ビルに対し、使うエネルギーの10%以上を設置した太陽光発電設備から供給することを義務化すれば、壁面や窓への導入が進むとした。
日本生まれのペロブスカイト太陽電池だが、量産では中国が先行する。国内で市場が盛り上がれば、日本メーカーにも商機となる。次世代太陽電池産業の育成にはコストダウンに加え、需要創出も必要だ。
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<書籍紹介>
次世代太陽電池の本命「ペロブスカイト太陽電池」の実用化が近づいている。その産業化のカギは、素材の製造やそれを扱う技術が握る。取材を重ねてきた著者が、ペロブスカイト太陽電池をビジネスの視点で捉えつつ、技術的解説や日本企業と世界市場の動向をまとめるとともに、ペロブスカイト太陽電池の誕生や、その実用化への舞台裏を詳らかにする。技術監修はペロブスカイト太陽電池の“生みの親”である宮坂力・桐蔭横浜大学特任教授。
著者:葭本隆太
技術監修:宮坂力
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,980円