需要回復、日系電子部品の世界出荷…今後の成長のカギを握るモノ
電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた日本メーカーによる2024年上期(1―6月)の電子部品世界出荷額は、前年同期比5・8%増の2兆1544億円だった。為替の円安効果のほか、スマートフォンをはじめとしたセットメーカーなどの在庫調整が一段落し、電子部品需要が戻りつつある。地域別では出荷額が最大の中国向けが同16・2%増の7324億円に伸びた。今後は人工知能(AI)サーバーといった新たな需要の取り込みが、電子部品業界の成長のカギを握りそうだ。
製品別に見ると、自動車やスマホなどに幅広く使われるコンデンサーは前年同期比8・9%増の7348億円。コンデンサーと組み合わせて電流の波をなだらかにするインダクターは同24・3%増の1793億円だった。
全体の出荷額に占める海外向け比率は約80%を占め、為替の円安も出荷額を押し上げたようだ。地域別では中国向けが全体の34%を占めたほか、米州は同7・2%増の2647億円、日本は同3・6%増の4659億円となった。
23年上期(1―6月)は顧客の在庫調整が続き、電子部品メーカーにとって新規受注が入りにくくなった時期だった。コロナ禍での半導体不足などを背景にセットメーカーなどが先行発注を積極的に行った結果、在庫が積み上がり、消化に時間を要していた。
24年上期が前年同期から出荷額が伸びた背景には、電子部品の出荷が伸び悩んだ23年上期からの反動ともいえる。「中華系スマホを中心に在庫調整が終わった」(業界関係者)ことも出荷額の回復を後押しした。
産業機器の領域でも回復の兆しが見えてきた。半導体・電子部品の販売を手がけるコアスタッフ(東京都豊島区)の戸沢正紀社長は「産業機器の領域で、電子部品への受注が徐々に回復してきた」と振り返る。
24年下期(7―12月)にかけては、北米スマホの新製品発売に伴う、電子部品の出荷額の増加が期待される。例えば、9月には米アップルが新製品を発表する見通しだ。「北米スマホ向けは(電子部品業界への)インパクトが大きい」(業界関係者)と話す。
ただ米IDCの調査によると、24年のスマホの世界出荷台数は前年比5・8%増の約12億台にとどまる見込み。こうした中、新分野の開拓は不可欠だ。「市場規模は小さいものの、AIサーバー向けは今後伸びていくだろう」(業界関係者)という声もあり、新たな需要の取り込みが電子部品業界の成長を左右しそうだ。
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