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「手が動くようになって戻ってくる」…企業を引きつける、電通大DSプログラムの売り

「手が動くようになって戻ってくる」…企業を引きつける、電通大DSプログラムの売り

修了生有志による勉強会も行われている

DS特論、実践力鍛える

「社員を通常の講座に派遣すると、口が動くようになって帰ってくる。対して電気通信大学に行かせると、手が動くようになって戻ってくる」。そんな産業界の評判が聞こえるのは、「UEC(電通大)データサイエンス(DS)プログラム」だ。政府が後押しする近年のDS教育に対し、約10年の蓄積で企業を引きつけている。(編集委員・山本佳世子)

電通大のDSプログラムは有料の企業人と無料の博士学生が混じり合った三つのレベルで進められる。基礎はDS業務にまず必要な科目、「Python(パイソン)プログラミング」「同100本ノック」など。応用はプロジェクト主担当者向けで、機械学習の基本的手法「回帰モデル」「判別モデル」の作成が課せられる。エキスパートはモノづくりに向けた「デザイン思考」や「モック作成」、コンペ(競技会)に向けた「カグル講義」などを受講する。

一番の売りはエキスパートレベルの「DS特論」。土曜日を使った6週間のグループワークだ。まずデータ提供企業や、同大の「データアントレプレナーコンソーシアム」参加企業を交え、収支向上に向けた大きめの課題を提示してもらう。

そこから具体的な課題に落とし込むが、受講生の案に対し「ビジネス的に価値がない」「すでに手がけられている」などの指摘がされる。課題解決に向け、どのようなデータ分析とモデル開発を行うか、決めるのも受講生だ。

実践後の出来栄えは「解決策は妥当だったか」「ビジネス課題に対し、精度や効率の上で適切なDSを実施できたか」など評価される。これまでに「サッカーJリーグの一部クラブのグッズ販売データ」や「神奈川県逗子市の観光に関わる位置情報解析データ」などの実データで行った。担当の原田慧教授は「イメージとしては一人で、課題の落とし込みやプログラミングなどすべてを手がける」と“手が動くようになる”評判の理由を説明している。

日刊工業新聞 2024年08月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
学びによって発達するのは、口か手か。重要性は職種によって違います。コンサルタントや営業職は口が達者でなければ務まりません。けれども研究者や技術者においては、やはり「手を動かす」ことが、あるべき姿だと思います。

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