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製紙業界「パッケージング」で付加価値高める

食品軸に機能提案、海外でM&Aも
製紙業界「パッケージング」で付加価値高める

バリアーフィルムに匹敵する遮蔽性を備えた紙でパッケージを試作(日本製紙)

 国内紙市場の成熟を受け、製紙大手が印刷・紙工など川下分野のパッケージング事業強化に動いている。情報化の進展に伴って宣伝広告や業務系の印刷需要が減り続けているのに対し、容器・包装分野は食品などで商品サイクル短縮・多品種展開が進み、海外市場も膨らんでいるためだ。ニーズに応えれば顧客とのパイプを強固にでき、紙の付加価値を高めることにもなる。

 日本製紙はパッケージ分野を成長領域ととらえ、4月1日付で企画本部内に「パッケージング・コミュニケーションセンター」、研究開発本部内に「パッケージング研究所」を新設した。兼任者を含め、それぞれ10人規模で発足。

 金子知生パッケージング・コミュニケーションセンター長は「これまでの原紙供給にとどまらず、新素材の活用も含めたマーケティング・提案機能を担う」と話す。日本紙は従来、飲料用紙パック部門だけにデザイナーを置いていたが、同センター新設に合わせて紙器デザインの経験者を中途採用して配属した。

 また、パッケージング研究所はこれまでの木質バイオマスをベースとしたパッケージ向きの原紙開発にとどまらず、各種複合素材やバイオプラスチックの開発も推進する。両組織をパッケージング事業の“ハブ”と位置づけ、社内の他部門にとどまらずグループ会社とも連携を図っていく。

 一方、王子ホールディングス(HD)は海外を舞台にM&A(合併・買収)を推し進め、パッケージング事業で市場を押さえる戦略だ。

 最近、王子HDが積極的な動きをみせている国がマレーシア。昨秋、ラベル印刷や紙器、パンフレットなどの印刷・紙工を手がけるハイパー―レジオン・ラベルズ(HRL、ジョホール州)の買収を決めたのに続き、2月下旬には同国の子会社を通じて段ボール製造・販売会社、ダズン・ペーパー・インダストリアル(セランゴール州)の全発行済み株式を取得する売買契約を結んだ。

 HRLは特に製品偽造防止のための特殊ラベルに強みがあり、顧客には日系大手メーカーも多いという。また、ダズンは同国で段ボールの消費量が最も多いクアラルンプール首都圏に工場があり、同国7カ所目の段ボール製造・販売拠点として製品供給力を高める狙い。ダズンの遊休地を活用した生産設備の増強も検討している。

 王子HDは事業構造転換の一環として、東南アジアおよびインドでパッケージング事業を積極展開しており、すでに20カ所を超す拠点が稼働している。
(文=青柳一弘)
日刊工業新聞2016年4月7日素材面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
パッケージングうんぬんより、製紙業界にとって海外展開の遅れが最大の課題。製紙会社の海外売上高比率の平均は20%にも届かず、他の素材産業に比べ極めて低い。紙の需要がピークを迎えたのは2000年代に入ってからで、内需が減っていく危機感も薄かった。他の素材産業が顧客の海外展開に追随する形でグローバル化を進めざるを得ないという外圧もなし。成功するか分からないが王子のM&Aのように海外顧客とのパイプを作りを急ぐ必要あり。

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