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日本勢、アジアの鉄道事業に勢い

東芝は来年から電機品生産。三菱重工などは過去最大の受注案件
日本勢、アジアの鉄道事業に勢い

タイに納入するアルミ製の軽量車両(イメージ)

 東芝は7日、インドで鉄道車両向け電気品を2017年4月から生産すると発表した。現地の既存工場内に生産ラインを新設し、まず電力変換装置と車両制御情報システムを生産する。投資額は非公開。現地生産に乗り出すことで低価格化を進めるほか、部品供給の迅速化やメンテナンスの質向上につなげ、インドでの鉄道事業を拡大する。将来は中近東やアフリカ市場もカバーするグローバルな製造拠点の機能の付与も視野に入れる。

 インドの送変電・配電事業の拠点である「東芝電力流通システム・インド社」に4月1日付けで鉄道車両向け電気品などの製造を手がける部門を新設した。電力変換装置と車両制御情報システムの生産ラインを1本ずつ立ち上げ、17年4月から製造を始める計画。生産能力は非公開。将来はモーターなどに生産品目を広げる。

 東芝の鉄道車両向け電気品の生産拠点は日本、中国、米国の3カ所。06年にインドでの鉄道事業に参入したが、現在はこれら3拠点から製品を調達している。

 インドでは政府が主導し鉄道建設を進めており、世界上位の需要がある。一方でコスト低減要求が厳しいため、東芝は現地生産に乗り出し競争力向上を図る。

三菱重工・日立など、タイで都市鉄道


日刊工業新聞2016年3月31日


 住友商事三菱重工業日立製作所は30日、タイ国鉄からバンコク市の都市鉄道工事を受注したと発表した。受注額は約1120億円で、日本勢として鉄道分野でアジア最大級の受注案件となる。信号システムや変電設備、車両を納入し、2020年に完成予定。この受注をテコに官民一体での鉄道インフラ輸出拡大に弾みが付きそうだ。

 受注したのは、タイ政府による大規模鉄道事業の一つである「レッドライン」。バンコク市中心部のバンスー駅を起点とし、北に26・4キロメートル、西に14・6キロメートル延びる全線高架の路線で、アルミニウム合金製の軽量車両を採用する。

 北線の建設には日本政府からタイ政府への円借款が供与され、西線はタイ政府の資金で建設される。三菱重工が信号や通信、軌道、電力などの鉄道システムの設計・調達を、住友商事が契約や交渉の取りまとめと同システムの現地据え付けを、日立が車両の設計・製造を請け負う。

 タイでは自動車の利用拡大を背景に、道路渋滞や大気汚染の問題が深刻化しており、低炭素で大規模輸送できる交通インフラが求められている。

 タイでは丸紅と東芝、JR東日本もバンコク市の都市鉄道「パープルライン」向け鉄道システム納入とメンテナンス事業を受注しており、16年8月に開業予定。また15年にインドネシアで、三井物産神戸製鋼所、東洋エンジニアリングがジャカルタの地下鉄工事などを受注している。

双日、インドの貨物鉄道敷設を受注


日刊工業新聞2016年2月29日


 双日がインドで鉄道工事の受注を伸ばしている。デリーとムンバイを結ぶ貨物専用鉄道事業で、敷設工事など(写真)を新たに受注した。受注額は約1100億円。過去の受注を含め、同事業に関する総受注額は約2700億円となる。インドを鉄道分野の最重点市場に位置づけ、同事業の追加受注を目指す。都市鉄道や高速鉄道事業への参画も視野に入れる。

 同事業はデリー―ムンバイ間に全長1500キロメートルの貨物専用鉄道を建設する。双日が受注したのは西部グジャラート州の289キロメートルの線路敷設工事と、同州とマハラシュトラ州間での422キロメートルの電気設備工事。両工事ともに同社が過去に受注した区間からの延伸となる。双日が全体管理を担い、設計や施工、土木工事などを現地企業のL&T、GPが行う。2016年度に着工し、20年春までに完工予定。

 入札には三井物産などの企業連合も参加したが、双日では入札価格に加えて、過去の受注案件で蓄積した工事ノウハウも評価され、受注したとみている。
2016年4月8日 
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
商社の影響力が強いとはいえメーカーも徐々に存在感を見せ始めた。東芝は早くからインドで鉄道関連の事業を展開してきたが、経営再建策の中で、鉄道をどこまで成長させることができるか。電機品の1社単独ではなかなか大きなステップは難しい。どこかと組むか。三菱重工と日立の鉄道事業の提携はこれまであまり見えにくかった。今後もケースバイケースか。

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