中小のスケールデメリットで意外な盲点はコミュニケーションコスト

文=佐々木陽三朗(中小企業診断士)「実施時間×人数」のチャート化を

 経営者であれば会社を大きくしたいという思いは誰しも同じであろう。大きくすることで世の中にインパクトを与えることができる。一般的にはスケール“メリット”が効いて交渉が有利になりコストダウンにもつながる。

 しかし、その一方でスケール“デメリット”があることを知っておかないと思わぬ誤算となる。わかりやすいデメリットの例として、中小企業、小規模企業であれば利用できた各種優遇策が使えなくなるということがある。現在公募中のものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、政策金融公庫の制度融資などは使えない。税務上も原則は資本金、利益、従業員数が増加するほど税率が上がる仕組みとなっているほか、優遇税制の活用も制限される。

 次に気づきにくいデメリットを挙げよう。例えば、仕入、調達ができなくなるということがある。特殊な原材料や外注先を活用して事業を行っている場合、仕入れ先がともに成長してくれないと、事業は立ち行かなくなる。下手に仕入外注先を変えると品質低下やコストアップにつながることもある。

 店舗展開ビジネスでも、初期の頃はえりすぐった一等地に出店するものの、売り上げ拡大ばかりを求めると次第に二等、三等立地に出店し利益率を下げてしまうということがある。

 また、意外な盲点としてコミュニケーションコストというものがある。点と点を結ぶ線の数が何本あるかをイメージしてもらうとよいが、点が二つなら1本、三つなら3本、四つなら6本と点(=人)が増えるにしたがって線の数は幾何級数的に増加する。

 伝言ゲーム方式ならここまで数は増えないが、その分、意図が伝わりにくくなる。効率的かつ効果的なコミュニケーション体制を準備しておかないと、社員増とともに社内連絡や会議だらけで仕事どころではなくなる。

 以上、いくつかの例を挙げてきたが、事業拡大を目指す上では、デメリットや壁を事前に察知し、最適な成長ペースを想定するとよいだろう。

会社がコントロールできる設計方法を考えよう


 では、効果的なコミュニケーションはどのように企画設計していけばよいのだろうか。社内コミュニケーションの手段には、会話、電話、メールといったものに加えて、会議、研修、公式イベント(年間表彰など)、社内報、掲示板がある。

 会話、電話などはコスト以外は会社がコントロールできるものではないので、ここでは会議など会社がコントロールできるものについての設計方法を考える。

 始めに社内の会議について、実施内容に加えて、目的、対象者、実施回数(頻度)、実施時間(参加者の拘束時間)、コスト(会場費など)といったことを例のように一覧で整理するとよい。

 紙面に限りがあるので例の図表は必要最小限の項目しか書いていないが、できれば、1人当たりのコストや総実施時間(実施時間×人数)なども記載するとよい。また、実施時期については視覚的にわかるようにチャート化したほうがよいだろう。

 この表を会社の経営方針、中期計画などと照らし合わせることで、無駄なものや会社にとって足りていない部分が見えてくる。

 また、「研修目的の会議がどの階層を対象にどれくらい実施しているか」などとクロス集計を行っていくことで、より高度な分析も可能になる。こういった情報を元にコミュニケーション体系を改善していくと良い。

 実にシンプルな方法だが、ぜひ一度、皆さまの会社でも取り組んでみていただきたい。

 

日刊工業新聞2016年3月15日/4月5日

明 豊

明 豊
04月11日
この記事のファシリテーター

コストというか質の方が重要。集まるメンバーとか何を議題にするとか。たまにはフリーで延々と話すのも悪くはない。それと議長は大事ですね。それは定量的にコスト化できない。まぁ、何のためにやっているか分からなずルーティンになっている会議も多いので、いったんそれを「見える化」するのは悪くないかも。

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