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新薬の販売をより早く。製薬協がアジアで審査を支援

新薬の販売をより早く。製薬協がアジアで審査を支援

会見する多田正世会長(大日本住友製薬社長)

 日本製薬工業協会(製薬協)は、アジアで医薬品の申請や承認の円滑化につながる取り組みを強化する。新薬の申請を行う企業側と、審査を担当する規制当局の双方を対象とした研修を、11月に台湾で試験的に始める。申請や承認の手続きに必要な資料やコミュニケーションの質を向上し、手戻りを防ぐことで新薬の速やかな発売につなげる狙い。

 11月に始める研修は日本の審査機関である医薬品医療機器総合機構(PMDA)や、PMDAと類似の機能を持つ台湾の衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)と共同で行う。申請企業向けの研修は主に製薬協が、規制当局向けは当局の審査経験者が中心に担当する。受講者数は約50人の見通し。

 2017―19年にアジア各国で研修を展開し、18―20年に効果測定を行う。効果測定では、実際の審査期間短縮に研修がどれだけ寄与したかを検証する。新薬の申請・承認プロセスは国や地域により異なるため、海外進出を狙う製薬企業は申請作業に手間取って新薬発売が遅れる懸念があった。

 製薬協は7―8日に都内で行われた第5回アジア製薬団体連携会議に参加し、申請書類の標準化や当局の理解促進といった薬事規制の国際協調を進めることを各国の製薬団体と確認した。8日に会見した多田正世会長(大日本住友製薬社長)は「アジアの人々に革新的な新薬を速やかに届けることが使命だ」と述べた。

厚労省、日本の制度を世界に浸透へ


日刊工業新聞2015年6月30日


 厚生労働省は日本の薬事制度を国際社会で調和、浸透させるための戦略「国際薬事規制調和戦略」を初めて策定した。アジア各国を中心とし、海外の薬事制度に日本の制度が参照、埋め込まれるようにする。

 これにより、日本で開発、承認された医薬品や医療機器、再生医療製品が各国で素早く承認される道を開く。これまで厚労省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、企業や関係団体から申請、要望されたものに力を注いできた。今後は日本の制度を積極的に国際調和させ、制度自体を輸出する役割も担うことになる。

 「ウチは、とにかく来るものを一生懸命やってきた規制当局。今回の戦略により頭を切り替え、世界に発信していくことになる」。厚労省医薬食品局では、こんな声が聞かれる。

 自国の薬事制度の一部や主要部分を各国の制度と合わせ、審査作業を素早くする薬事規制の国際調和。米国、欧州との日米欧三極で取り組んできた医薬品を筆頭に、これまで国際調和は手がけていなかったわけではない。だが、今回ほど統一的で中長期的な戦略にし、かつ施策の進捗(しんちょく)を定期的に確認できる体制まで作るのは初めてだ。

 背景の一つは日本の薬事制度が国際的に遜色ないレベルに達してきたことや、かつて問題になったドラッグラグやデバイスラグ(医薬品や医療機器が海外で承認され、日本では承認、使用できるようになるまでに時間がかかったこと)もかなり解消してきたことがある。

 制度の最大の進展は2014年秋に施行した医薬品医療機器法(改正薬事法)。再生医療製品を早期に条件付きで承認する制度は国際的に非常に注目され、米国食品医薬品局(FDA)も研究するほど。

 もう一つは米FDAを筆頭に欧米当局により、自国の薬事制度を広める動きが、アジア各国に着実に浸透している点。米FDAの承認品は審査を簡略にするなど、欧米発の医薬品や医療機器が迅速に広まる制度的な素地が整えられつつある。

 簡略化対象には、日本の制度はほぼない。これでは、日本政府が成長戦略として掲げる医薬品や医療機器の国際展開につながらない。

 制度を輸出し、相手国に評価される形で定着を目指す発想や方法は、日本では経済産業省の所管領域で当たり前のこととして行われてきた。政府全体として医療産業を成長産業に掲げるならば、薬事制度の国際調和は、やはり避けて通れない道だ。
(米今真一郎)
日刊工業新聞電子版2016年4月9日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
開発した新薬を販売するまでには、規制当局に申請・承認の手続きを得る。だが、日本とアジアではスキームの違いから、アジアで販売するまでにはタイムラグが発生するケースもある。アジアの審査体制を支援して新薬販売を促すだけでなく、制度面でも日本メーカーが承認手続きをしやすくなり、医薬品の海外展開の側面支援になる。

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