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中小企業、人材確保へ「防衛的」な賃上げか

7割が16年に賃上げ実施予定
 商工中金が7日発表した「中小企業の賃金動向に関する調査」によると、人手不足を背景に2016年は70%以上の中小企業が定期昇給やベースアップ、賞与などの賃上げを実施する予定だ。賃上げを予定する企業は回答企業4640社のうち72・2%を占め、15年に賃上げを実施した77・3%に比べ若干下がるが、未定の企業もあり、16年も「賃上げの機運に大きな変化はない」(商工中金)とみられる。

 16年に賃上げを予定する理由(複数回答)としては「処遇改善による人材の定着化」が64・6%と最も多く、「自社の業績改善を反映」が44・1%、「人材確保(採用)のために必要」が43・3%と続く。今後も人手不足感が高まることを見込み、各社が待遇改善による労働力確保を狙っていることがうかがえる。

 一方、中小企業が賃上げを行わない理由(複数回答)では、15年は「自社の業績低迷のため」が55・8%で最も多かったが、16年は「景気見通しが不透明」が57・4%、「自社の業績低迷のため」が43・3%という結果だった。

 国内外での経済の停滞感により、景気の先行き見通しに対する見方が慎重になっている。調査は商工中金の取引先中小企業9720社を対象に実施し、有効回答数は4640社。
日刊工業新聞2016年4月8日付4面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
16年春闘の回答状況からは中小企業の賃上げ額が大手企業を上回っていることが大きく報じられていますが、手放しで喜べる状況とはいえません。「アベノミクス」が波及したのではなく、人材の獲得・定着のため、厳しい収益状況にもかかわらず賃上げに踏み切らざるを得ない企業が少なくないからです。

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