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「薄膜トランジスタ」電子移動度10倍に、北大などが成功した意義

「薄膜トランジスタ」電子移動度10倍に、北大などが成功した意義

北海道大学提供

北海道大学の曲勇作助教と太田裕道教授、高知工科大学の古田守教授らは薄膜トランジスタ(TFT)の電子移動度を10倍に向上させることに成功した。酸化インジウムを活性層に用いて保護膜で酸素などから守る。耐久性が向上して実用レベルのTFTを作製できた。8K有機ELディスプレーの要求性能を満たせる。

電子移動度が1ボルト秒当たり78平方センチメートルの酸化物TFTを開発した。酸化インジウムを用いると電子移動度は同140平方センチメートルと高速になるが、空気中の酸素や水分で劣化する課題があった。

そこで酸化インジウムと格子定数の近い酸化イットリウムや酸化エルビウムで保護膜を作製した。活性層の上に結晶性薄膜ができ、20ボルトを5000秒印加しても性能は変わらなかった。保護膜が非晶質になると気体分子が透過してしまい保護効果は得られない。TFTの電子移動度は同78平方センチメートルで、8K有機ELディスプレーに必要な同70平方センチメートルを超えた。4K有機ELディスプレーは同5―10平方センチメートルだった。

日刊工業新聞 2024年08月14日

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