人手不足が深刻化「グラハン」盛り上げる…ANA、魅力発信へあの手・この手
給油・荷物搬出、間近で見学
全日本空輸(ANA)は一風変わった方法で空港で航空機の誘導などを行う地上支援業務(グランドハンドリング、グラハン)の盛り上げを図っている。少女マンガの共同制作や現場体験ツアーなどを実施。人手不足が深刻化する中、新しい方法で仕事の魅力を発信し、将来の人材確保につなげたい考えだ。(梶原洵子)
晴天に恵まれた7月の土日、ANAは成田空港(千葉県成田市)でふるさと納税の返礼品として「ANA成田空港グラハンツアー」を実施した。
さまざまな業界が工場見学などの現場体験を実施しているが、ANAの企画は働く人との近さや迫力が段違いだ。参加者からわずか数メートルほどの距離に飛行機が駐機し、胴体の横腹に開いたハッチから次々と荷物が運び出される。搭乗前に空港建物から見るのと違い、目の前の飛行機は非常に大きい。
ギリギリまで飛行機に近づきつつ、保安や安全の基準を満たすため、1日の参加者は5人に限定した。参加者はグラハンのスタッフが給油や水の入れ替えなどをテキパキと行う様子を間近で見学した。出発時に飛行機を押すトーバーレストラクターなどの空港作業支援車の乗車体験も行った。
「飛行機は事故が起きず、乗客が快適に過ごせるように、多くのプロが関わって飛ばしている。働く人の魅力を知って欲しい」とツアーを企画した小林周平氏は狙いを語る。臨場感を追求したツアーは、社内のさまざまな部署の延べ50人超が関わり、実現にこぎつけたという。
2日間とも親子連れが参加し、「『初めて知った』『感動した』『もう1回来たい』と言ってもらえて、頭が下がる思いだ」と小林氏。成田空港では9月に第2弾のツアーを予定し、他空港からも「挑戦したい」という声が上がっているという。
このほかに、ANAは小学館と協力し、2月からグラハン女子が主人公のマンガの連載を女子中高生向けの月刊誌「ベツコミ」で開始した。7月にはトートバッグ専門ブランド「ルートート」の協力で、グラハン制服シャツの古着をアップサイクルしたミニサイズのトートバッグを発売した。ANAカラーのブルーのストライプ柄が目を引くデザインとなっている。
それぞれの企画は別の部署が担当し、バラバラに動いているが、「グラハンを盛り上げたいという同じ思いがある」(ANAグループ広報)。グラハンの人手不足は深刻だが、大変さだけでなく魅力を伝えなければ人材は確保できない。あの手この手で魅力を発信し業界の活性化を目指す。
【関連記事】 航空機リースのからくり