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日本でも推進…データ主権を守る「データスペース」とは?

スマート都市・脱炭素向け次世代基盤に

巨大プラットフォーマーが牛耳る既存のクラウド市場に対して、データ主権を守りながら非中央集権型で相互にデータ交換・共有ができる「データスペース」と呼ぶ、連邦型の新しいデータ連携基盤が注目されている。目指すのは国や業界を超えて企業・組織が安全に相互接続できる技術と仕組み。先導役は欧州だが、スマートシティー(次世代環境都市)やカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)の次世代基盤として日本でも取り組みが進む。

データスペースは日本では聞き慣れない用語だが、欧州では関連するソフトウエアやプロジェクトが続々と登場している。主な取り組みは「カテナ―X」「ファイウエア」「エクリプス」など10以上あり、欧州でビジネスを行う上で対応を迫られている日本企業も少なくない。

こうした海外動向を踏まえ、経済産業省を中心に日本版のデータ連携基盤の取り組みが急ピッチで進む。代表的なのは一般社団法人のデータ社会推進協議会(DSA)を中心に開発中の「DATA―EX」と、経産省と情報処理推進機構(IPA)が主導する「ウラノス・エコシステム」。これらをベースに国境や業界、企業を超えたデータ連携のあり方を官民連携で押し進めようとしているのが現状だ。

データスペースは個々の企業でも研究開発が進むが、国や業界を超えた枠組みを作り、実証実験を行うのは簡単ではない。こうした中、東京大学大学院の越塚登教授をプロジェクトリーダーとして東大でデータスペースのテストベッド(検証施設)が立ち上がった。「広域で組織をまたいだデータ連携を1社で行うのは大変。データ連携を試したいと思ったときに、触れる環境があるのが重要。それを提供するのは大学の役割だ」と越塚教授は言及する。

テストベッドは現在、「フェーズ1」。参加企業・団体は10程度。テスト環境は東大の計算機システム内にあり、「仮想私設網(VPN)をベースに会社を超えたネットワークを作り、データ共有に必要なソフトウエアをそれぞれが持ち込んで、すぐに触って動かせるようにしている」(越塚教授)。当面は実装や管理・運用の方法などを学ぶ段階だ。

テストベッドで扱うデータスペース対応のオープンソース・ソフトウエアは三つ。欧州仕様はIDSA(インターナショナル・データスペース・アソシエーション)が開発・推奨するソフトウエア「EDC」と、スマートシティー向けソフト基盤のファイウエア。

日本版は自動運転やモビリティーサービスを想定して、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)が開発したデータ共有基盤「CADDE」だ。「データスペース向けで代表的なオープンソースソフトウエアを三つ同時に動かしいる事例は他には聞いたことがない」(業界関係者)。DATA―EXも開発が完了し、実装すればデータスペース同士の接続実験も可能となる。

10月からは「フェーズ2」に入り、実証実験などを本格化する。欧州など海外のデータスペースの技術コミュニティーとの共働活動も注目される。

日刊工業新聞 2024年08月12日

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